東京一極集中の危険性

東京都小平市 小俣 一郎


 当会の前身「平成維新の会」の創立者である大前研一氏は近著「低欲望社会」において、「日本創成会議」の東京一極集中是正提言に反論するかたちで、「私は、東京一極集中は日本のためには望ましいことであり、さらに加速すればよいと考えている。」と発言している。そして、「なぜなら、東京は世界で最も公共交通網が発達した都市だからだ。とくに地下鉄網はまさに網の目のように張り巡らされ、それが私鉄に乗り入れてJRともリンクしている。こんな都市は、世界のどこにもない。」「・・・容積率を緩和するだけで山手線の内側に現在の2倍の人口が安く住めるようになるわけで、・・・そうすると通勤の負担が極めて軽くなる。」と続けている。

 たしかに東京は便利である。そしてそこにさらに多くの人が安く住むことができれば、日本の住環境は飛躍的に改善するかもしれない。ただ私は現段階で大前さんの考えに賛成することはできない。なぜなら、東京は災害に弱いからである。

 東京の中心部は、徳川家康が江戸を本拠地とするまでは湿地帯であり、海であった。だから地盤は弱く、水にも弱い。それに大地震も頻発する。富士山という巨大な火山も近くに存在する。東京圏を襲う大地震も、富士山の噴火も、いつ起こってもおかしくないと言われている。台風も巨大化してきている。

 そのような状況で東京圏の人口をさらに膨らませるのは大変に危険である。一度に被災する人がより増えるからだ。現状でも東京圏への人口流入は続いていて、1都3県の現在の人口は3,500万を超えている。そこに大災害が発生したら、被災者数の桁がこれまでとは違ってくる。

阪神淡路大震災のときの避難人数は、316,678人である。それに対し、中央防災会議の首都直下地震の想定避難者は約7,200,000人で、帰宅困難者約17,000,000人という数字もある。もちろんそれを単純に比較することはできないが、被災する人がいかに多いかが想像できる。

もし東京圏で大震災が発生したら、そのあまりにも多い被災者をだれが支援するのであろうか。一度に起こる被害をできるだけ小さくするために、東京圏の人口は減らさなければならないのである。

まずは、東京に集中している政治機能を分散させ、東京圏への人口流入を止める必要がある。国の機関の多くを東京圏から移すことで必ず人の流れは変わる。民間を強制移転させることはできないが、国の機関の移転はやる気があればできる。国が動けば連動して民間も動くことになるだろう。

そしてその上で、東京をより安全な都市にするために、東京の災害危険地帯からの人口の移動を促進するために容積率の緩和を行う。それならば大賛成である。