忘却のかなたから -6

東京都渋谷区 塚崎 義人

「かたよらないこころ、こだわらないこころ、とらわれないこころ、

ひろく、ひろく、もっとひろく〜〜〜」

薬師寺元管長・故高田好胤師

社会の真似る仕組み

心のはたらき(超微小粒子)と意識(観念)と雲(時間=位置・空間=情報)を活性させることが大切とお伝えしました。つぎに雲:時空間「(時間=過去⇔現在⇔未来=位置)(空間=過去・現在・未来=情報)」のイメージを膨らませます。

現象は時間が自由なら時間順序を反転し起こりえます。ただし、この現象は雲の中でのこと、起こったわけでも起こりつつあるわけでも、これから起こるわけでもありません。しかし現象があったこと今あること、これからあることとして過去・未来のいずれかに存在する可能性も否定できません。

情報(可能性=ある・ない)という波動する点が雲の中に数限りなく分布し、どの点も一つの現象が起こりそうなことを表わします。ただし現象が起こるには形式と内容ともに同じ二つの波動点が必要とされ、二つは雲の中に同時発生し一方が他方を変化(振幅変調)させることで何らかの現象が現れます。

心のはたらき(超微小粒子=波動点)を雲の中で生じさせると、過去か未来に生じている同じ波動点を求めて伝播し互いが出会った瞬間に変化を起し現象が現れます。心のはたらきは過去や未来にあると思われる同じ現象(波動点)を求める発信点(現在)であり過去や未来から伝わってくる現象の受信点(現在)でもあります。波動の流れの始まりも終わりもすべて人の心のはたらきにあり、二つの波動点は有意に結びつき確かな物理的・精神的な世界として現れてきます。

人間的思考の特質で最大の能力は、「心のはたらき(超微小粒子=波動点)」が持つ“統覚”です。この能力は過去や未来と波長を合わせ共鳴しさまざまな現象を自由に関連づけいかなる瞬間おいても意味を会得できることです。ただし、単に過去や未来に情報(可能性=ある・ない)が同時に存在しているだけでは発揮はしません。過去と未来の時間(過去⇔現在⇔未来=位置)に現象をはっきりと分離させることができた時、統覚は統一性ある意識(観念)の会得を可能にさせます。

現在のところ、ほとんど人の観察(発信点・受信点)する世界は過去や未来のどちらかいずれか一方だけの観察が多いので、ほんの部分的にしか意識(観念)を統一することができていません。それでも、この世界(宇宙も含め)は過去と未来の情報(可能性=ある・ない)の波動点が同時同所に存在するので人が知る限りの世界(宇宙も含め)はごくあたりまえの現象として現れています。ただし、過去と未来への観察行為の一方でも捨てされば“雲”は消えさり現実世界(宇宙も含め)は実体的なものは何一つ無く、ただ単にぼんやりとまぼろしのような“ゆらぎ”の世界だけとなるだけです。

 

5.社会現象(政治・経済・言語・芸術・精神)-3

忘却のかなたから、は“見きわめる”眼力(統覚)をテーマにしています。

 -1で先人を「真似る」、-2で「師の求めたるところを求める(空海、出典不明)」、-4で「定点(最も望ましく定まった価値観)」を、教訓(過去)と、あるべき姿(未来)と、何のための(価値観)、について述べています。

社会の持続には教訓とあるべき姿が大切、それと何のための(価値観)定点を見きわめる(極める・究める・窮める)”ことがポイントとなります。

 

社会現象には見える構造(既成概念)と見えない構造(概念変化)があり、今までは見える構造(既成概念)の慣習や伝統から起こるものがほとんどでした。その代表的な例として金(ゴールド)の超長期な伝統的社会現象があります。

人は金に対し観念的“理念”を抱き、金は“真・善・美・聖”、金はほんもの(真)、金はすぐれている(善)、金は美しいもの(美)、金は冒しがたい(聖)という絶対的“神秘性と永遠性”を心に持ち続けています。理念は“こうあるべきもの”といわれ、平たくいえば千年2千年変わらないものは理念(定点)とみてよいかと思います。

この観念的理念は社会のあらゆる面を安定させます。特に経済のかなめの貨幣には貢献度が大きく、貨幣が金塊(ゴールド)→金貨→硬貨→紙幣へと形が変わりましたが金と交換できる信頼感があるので経済は安定をしていました。

1971年、米国の兌換紙幣ドル($)は金(ゴールド)との交換を停止しました。

それ以前は金の保有量に応じた金本位制(金と交換)の経済規模でしたが、大戦後、世界経済は規模を拡大し金本位制で対応しきれなくなり、ドル()を世界の基軸通貨とし金の代わりに絶対的保証価値あるものとして金に対する固定観念を(神秘性と永遠性)を終わらせ、新たに理念的概念(基軸通貨)の社会現象(理念ばなれ)を起こしたことでした。その結果、それまでの金本位制による狭い地域に限定された経済規模は封建主義や社会主義や資本主義や国の範疇を超え巨大な世界市場経済へ成長しています。さらに世界市場経済を成長させるため基軸通貨ドルではもう通貨量が不十分、その補完にポンド・ユーロ・円、そして元(中国通貨)も加え今や複数基軸通貨の時代です。世界経済は金から離れる“理念ばなれ”を起こしたことで巨大な市場規模を手に入れ複数基軸通貨体制でさらに成長発展させるつもりです。これら基軸通貨を持つ国々は世界市場経済を守る重い責任があります。

超長期な金の伝統的社会現象からの理念ばなれは、見える構造と見えない構造の間で大きな時差(ギャップ)を発生させています。なぜなら、工業的・装飾的価値しかなくなった金(ゴールド)はどうなったか?不思議に各国は後生大事に金を手放さずため込んでいることです。今なお米国はドル()発行高に占める金(ゴールド)の割合を70%以上担保できる世界一の金保有国のまま、世界各国が保有する総量は約3万トン、何の活用もせず中央銀行の奥深い金庫に保管したままにしています。

金への観念的理念という固定概念を払しょくし金から離れた(理念ばなれ)のですが、見える構造(個別心理)からすると金は絶対的価値という“理念がえり”をしています。見えない構造(社会心理)からは複数基軸通貨へ“理念ばなれ”をしていて、そこには大きな時間的な時差(ギャップ)が発生していることです。また、すでに複数基軸通貨(非兌換紙幣)制度も頂点に近づきつつあるかも? 世界経済の安定のため次の社会現象が起きているかもしれません。ただ、まだまだ人の金への頑固な固定概念は無くなっていないので、もし恐慌などで世界が混乱すると各国は金(ゴールド)へ雪崩を打って観念的理念(理念がえり)へ駆け込もうとするかもしれません。

 

 時間(過去・現在・未来)という流れから社会現象を観察してきました。この金(ゴールド)の社会現象も一つの例です。五分野(政治・経済・言語・芸術・精神)を観察する際には、見える構造と見えない構造から観ると多くの違ったイメージが湧いてきます。社会には新たな社会現象(一時的・多数的・大衆的)の情報(可能性=ある・ない)は溢れかえっています。

ぜひ、“定点(最も望ましく定まった価値観)”を見きわめていただければと思います。

・祖先(過去)は、何を真似て受け継いでたのでしょう?  

・家族(現在)は、何を真似させて受け継がせるのでしょう? 

・子孫(未来)は、何を真似て受け継ぐのでしょう?

 

次回から、見きわめる”眼力(統覚)を考察していきます。