外交選択のための道州制

東京都小平市 小俣 一郎


 

中東で日本人捕虜が殺害される事件が発生した。

ニュース解説等を聞いていても、中東の情勢は非常に複雑で、いろいろな勢力の思惑が入り乱れていて実にわかりにくい。いわゆる「中東の春」がうまくいかず、それ以後さらに混乱に拍車がかかっており、打開策は見えてこない。

ウクライナも混迷を続けている。

ウクライナ、ロシアと、仲介役のドイツ、フランスの首脳が約16時間もの会談を行い、2月12日にやっと停戦合意にまでこぎつけたが、最終決着にはほど遠いようである。この欧米とロシアの対立は今後どのように収まるのだろうか。

この2つの地域以外にも多くの紛争地域があるが、特に日本人捕虜の殺害は、日本も紛争の渦中にいることをあらためて認識させるものであった。

これからは、いままで以上に、外交・防衛に対する選択が国民に突き付けられることになるだろう。

しかし、いまの日本の政治のしくみはそれに耐えられるものであろうか。

日本では政治において国が担当している役割が非常に大きく、多岐にわたっており、よって外交・防衛が選挙の際の重要な選択肢にならない傾向がある。

昨年末の総選挙では、「アベノミクスの継続」が最大の争点になり、外交・防衛はほとんど争点にはならなかった。が、大勝した安倍首相は「安倍流積極外交」が信任されたとして行動している。(もちろん現在のシステムではそれは当然のことだろうが・・・。)

国民は本当に「安倍流積極外交」に賛成したのであろうか。賛成したとして、それは大賛成なのだろうか、それとも・・・。残念ながらいまのしくみではそれがよくわからない。もしかしたら、外交は反対だがアベノミクスには大賛成で、それで自民党に投票したという人もいるかもしれない。

ともかく、いまはあまりにも国の役割が大きく、結果的に国政選挙での選択肢も多くなり、国民が外交・防衛を選択しにくい制度になっていることは間違いない。

政府は現在周辺事態法の「周辺事態」という地理的概念をなくすことを検討しているという。法律制定時、当時の小渕首相は「中東やインド洋は想定されない」との見解を明らかにしていたが、それを変更するわけで、それがどこまで広がるのかは時の政権の判断しだいということになるのだろう。「後方支援対象」も拡大するという。果たしてそれが先の選挙での民意なのであろうか。

また、急にそのように任務を拡大したとして、今の自衛隊はそれに耐えうる組織なのであろうか。活動範囲、活動内容を大幅に拡大したら、当然、自衛隊の負担も大幅に増えることになる。自衛隊が担う特殊な役割を遂行するためには、鍛えられた隊員が必要である。足りないからといってすぐに増員できるものではない。

近年、国内でも自然災害が多く発生し、現在その救援作業も自衛隊の大きな役割となっている。いざというときにそこに派遣できる隊員がいないなどということにはならないのか。

自衛隊を活用することによるリスク、活用しないことによるリスク、自衛隊についてだけでもいろいろと考えられる。

果たして、どのような選択をするのが良いのか。より良いのか。

国民はその選択による結果がどのようなものでも、自分たちの選択としてそれを甘んじて受けなければならない。良いと思った選択が後で振り返ったときに失敗だったと思うこともあるかもしれない。そのようなこともしっかりと自覚して選択していく必要があるだろう。

そのためにも、外交・防衛を国政における最大の選択肢とできるように制度自体を変える必要があるのではないか。そしてそれは、道州制の導入で現在の国の役割を国と地方に分けることによって実現させるのが一番の近道なのではないだろうか。

道州制は、国の役割を外交や防衛、金融・通貨、社会保障、司法等に限定し、他の役割を州に移すことにより、役割分担を明確にし、国も地方も活性化させようという制度である。

この道州制の必要性はこれまで、中央集権の弊害や、地方の活性化等の側面から多く語られてきたが、『国民が外交を選択できる制度』という側面からその意義を改めて認識する必要があるのではないか。

この混迷している世界情勢に対する国民の考えをはっきりさせるためにも、その総意がどこにあるかを明らかにするためにも、道州制導入の必要性を改めて感じる今日この頃である。

道州制実現推進委員会では道州制を早期に実現するために、『東西2大道州制』を提案しています。

これは、当面は現状の地方自治体を維持し、まず最初に現在の国の組織や役割のみを国と州に分けることにより国民が外交と内政を分けて選択できるようし、州の仕組みが落ち着いた後に地方自治体の制度改革を行うという段階的制度改革で、道州制移行にともなう混乱を少なく抑えることができる制度でもあります。