本当に日本人は先の大戦の反省をしているのか?
東京都文京区 岡戸 知裕
現代日本の実に重大かつ深刻な問題として先の大戦の原因と結果につき真摯な総括と反省がされていないことだ。よって歴史が繰り返されているということに多くの日本人が気付いていない。
■繰り返される財政破綻
その端的な例として敗戦時点での財政破綻であるが、これは国債の償還が不能となり銀行や郵貯の預金はすべて戦費に消えた訳である。高橋是清が暗殺された二二六事件以降陸軍という役人の横暴で軍事予算が無制限に拡大していったことから始まり大戦後の新円切り替えまで続くのだが、現代の役人も毎年予算の分捕りあいで予算の拡大に歯止めがかかっていない。まさに戦前も戦後も省益あって国益なしなのだ。これは民主党政権時代に長妻氏が厚生労働省からはじき出されたことが端的に表している。つまり役人に盾突く組織は消される運命に戦前も現代もある。歴史は繰り返す、一度目は悲劇として二度目は喜劇として。
まさに現代の日本においてその喜劇が再現されようとしている。
■ペーパーテスト信仰が再び日本を滅ぼす。
最近の端的な例として舛添要一が好例を提供している。
或る意味試験の成績は平等な判断を下すという意味で便利な方法であるがペーパーテストの成績だけで選別するという間違った指導者の選択方法は先の大戦の例を挙げれば帝国陸軍参謀本部の辻正信、東条英樹、牟田口連也、服部卓四郎….などにゆき当たる。
参謀本部は陸軍大学を卒業した、ペーパーテストの秀才達が集まるところだ。つまり弾道計算がだれよりも早く正確にできかつ過去の作戦例などを暗記しているわけだが、将官に決断の為の資料を提供しても決断するのはあくまで将官であって参謀ではないことは明らかである。旧陸軍の問題点としてこの参謀が辻正信の如く命令を下してしまっていた。そして組織上責任は問われないことになっているのでやりやりたい放題であった。お蔭で中国や東南アジアでの虐殺事件は殆ど彼の指令による。命令に従わないものは配置転換で玉砕の島などに左遷される訳だ。配置転換をムチとして彼は数々の虐殺事件を起こし、戦後の日本に不名誉きわまりない歴史の汚点を残した。
現代では好例として宮沢喜一元首相が上げられる。東大法学部出身で東大出身者としか話をしないということで有名であったようだ。彼は米国から言われてバブルを起こした仕掛け人で、財政破綻の生みの親でもある。ただ英語ができるというだけで、首相在任中たいした結果は残していない。
明治維新の立役者、勝海舟などは長崎の幕府海軍伝習所においてオランダ人教官による数学の講義など殆ど理解できなかったと伝えられている。勝海舟の優れた点として、世界の趨勢を理解し日本のおかれた状況を適格に理解していたという点において指導者として大変優れていたと言える。それは四書五経及び禅や剣道の修行に依拠している。
戦前は戦争を知らない戦争やの集まりであり、現代は政治を知らない政治家、経済を知らないエコノミスト、ジャーナリズムを理解しないジャーナリストが蔓延している。戦後日本の終わりの始まりである。
■財政支出に対するチェックが働かないという共通点
軍人も役人であり、盧溝橋事件は、軍事予算の拡大に貢献した。
現代においても八ッ場ダムは不要なのだが、国土交通省は今後100年ダムの予算を確保している。要するにダム用地を無限に指定して行く中で国交省の予算を確保してゆくわけだ。国がつぶれようがつぶれまいが、彼らには関係のない問題である。待機児童が減らない理由がここにもある。
財政支出のチェックをするのは議会であるが、議会はその肝心な機能を果たしていない。
■メディアのチェックが働かないという共通点
戦前も今もメディアの政治に対するチェックが働いていない。どの新聞も財政支出の中身について触れる新聞はない。つまり各省の記者クラブからタタキ出されるか、免許取り消しになることが怖いのか、消費税増税を自分達だけ回避しようとしているのか?
■“木をみて森を見ず”という共通点
日本人は優秀であるが、大局的にものを考えるということが苦手のようだ。つまり井の中の蛙である為か。
戦前においては、弱い中國との戦争は軍事予算拡大に貢献したが、絶対にやってはいけない米国との戦争を始めたということは、まさに木を見て森を見ずだ。今は中国の脅威が迫るなかでその脅威を脅威と感じずひたすら平和主義に凝り固まっているのは、ひたすら軍国主義に凝り固まった戦前と同じ亡国の論理だ。
■官僚統制国家という共通点
官僚を如何に使うかということが政治家の役割だが、戦前も現代も官僚に政治家が使われているのが現状だ。戦後陸軍省、海軍省、内務省は解体されたが、他の省はそのまま残った。結果財務省主導の国家となった。
■政治腐敗という共通点
自民党の代議士の後援会会長は殆ど土建屋である。
これが日本において土建に膨大な予算がつく原因である。旧民主党の小沢にしても岩手県において土建工事の予算配分をしているのは周知の事実である。
自民党は基本的に献金のあった団体には手当するが、献金しない団体、例えば消費者にはそっぽを向いている。ある意味GDPが伸びないのもその原因による。よって先日の主婦による“日本死ね”というような書き込みに慌てふためくわけだが、この例から見ても明らかなように、国民がもっと政治に参画すべきである。
■歴史からのアプローチがないという共通点
第一次大戦後のドイツに於ける天文学的なインフレと日本においても第二次大戦後のハイパーインフレなど厳しい歴史の教訓があるのだが。