マイケル・ピルズベリー著「China2049」(日経BP社刊)のご紹介
東京都文京区 松井 孝司
本書は秘密裏に墜行される「世界制覇100年戦略」の副題がつく警告の書です。
著者のピルズベリー氏は中国専門家として米国政府の対中政策に深くかかわってきましたが、中国の国家戦略の根底にある世界制覇の意図を見抜くことができず騙され続けてきたと告白する米国の対中国外交史にもなっています。
中国は中華人民共和国を建国した1949年の100周年にあたる2049年までに経済・軍事・政治のリーダーの地位を米国から奪い取り世界を制覇する長期戦略をもっており、この国家戦略は「礼記」や「孫子の兵法」など中国古典の歴史的知恵にもとづくものとされています。古代中国の春秋戦国の時代から伝えられる重要な教訓を取り入れ「敵が従わずにいられないような状況をつくりだして」勝利する戦略により地球上で最も高潔な強国となることが「中国の夢」なのです。
生活者主権の会のホームページ<折に触れ四字熟語>No.7で紹介していただいた「礼記」の「天に二日なく、土に二王なし」の「土」を地球と解釈すれば一人の権力者が世界制覇をめざす帝国主義です。ピルズベリー氏は最近になって中国の戦略と価値観は独自のもので米国のような民主主義国家を実現することではないことに気がついたのです。
中国研究の第一人者遠藤誉氏は中国「建国の父」毛沢東の基本戦略は、日本との戦いは蒋介石にまかせ温存した力を国民党潰しに使い自分が皇帝になることだったと述べていますが、毛沢東は古代中国の知恵にもとづく戦略を実践し、目的を達成したとみることもできます。(新潮新書「毛沢東」参照)
<折に触れ四字熟語>No.7
http://www.seikatsusha.org/masumoto/data/m-2016/n007.pdf