忘却への回帰 -5

東京都渋谷区 塚崎 義人

 

「かたよらないこころ、こだわらないこころ、とらわれないこころ、

ひろく、ひろく、もっとひろく〜〜〜」

薬師寺元管長・故高田好胤師

 

源流-5(心の世界)

 さらに深く探求のため、源流-1〜-4のポイントを再確認しておきます。

 

1, 源流-1 仮説の推論

     *推  論・・・・仮謬主義=不確定で不規則現象の中に新しい“秩序”を

     *実 在・・・・現象の背後にある世界“時間と空間”を含む

     *矛 盾・・・・連続していながら、まったく断絶した“現象”

     *特異点・・・・ある基準の下、その基準が適用できない“点”

      実在世界、今のところ人が知りえているのは宇宙(物質世界)と生命(生物世界)の二つだけです。

 

2, 源流-2 宇宙(物質世界)と生命(生物世界)の源はエネルギー

     *特異点・・・・矛盾現象の  “発生点”

     *要 素・・・・全体を構成する“基本”

     *体 系・・・・全体の仕組みを“統一”

     *展 開・・・・たどるべき  “終焉”  

    〇宇宙(物質世界)        

*特異点・・・・エネルギー爆発

*要 素・・・・素粒子

*体 系・・・・エネルギー=物資(質量)

*展 開・・・・終焉

宇宙のエネルギーの総量は不変、減りもせず増えもせずただただありとあらゆる物質へ変化し、再び物質はエネルギーへ変化している世界。 

〇生命(生物世界)

*特異点・・・・自己複製

*要 素・・・・核酸分子

*体 系・・・・自己増殖

*展 開・・・・淘汰

      物質の化学反応で生まれた生命(生物世界)は、核酸分子+細胞+多細胞体+個体という集合体、だからこそ生物。

 

3, 源流-3 心の器は、記憶の成立がはじまり

     *本能記憶・・・・遺伝子(生命力 :何がなんでも生きぬく )

     *知覚記憶・・・・情 報(条件反射:自らが反応行動ができる)

      心の器の中は、先天性本能行動プログラムと、外から得られる後天的知覚情報の二つの記憶機能があります。

   

4, 源流-4 心の器に時間と空間が発生、

     *心の器・・・・脳内中枢神経細胞の網目(情報が厚い層で記憶されている)

     *自己回帰・・・記憶同士振りかえり見つめなおす

     *時空間・・・・記憶は時間へ、時間は空間へ拡がる

     *自己回帰循環・基礎的機能(照合→判断→結果→記憶)

     *本能と知覚・・記憶には生命力のDNAと環境順応行動がある

     *判断機能・・・本能と知覚に致命的なダメージを生む

      心の器は、情報を記憶に、記憶を時間に、時間を空間に、判断と結果を論理に、快感(快・不快)は感情(喜怒哀楽)へと成長しています。

 

 多くの生物には心の器があります。その中でも人間の心の器にだけ不確定で不規則な「矛盾」する現象が発生、“こころ”という特異点を起点に心の世界が開かれました。

私たちが知りえる実在の世界は、今のところ、宇宙(物質世界)と生命(生物世界)とこころ(心の世界)の世界です。

宇宙(物質世界) 生命(生物世界) こころ(心の世界)

三つの世界は内側と外側という「入れ子」の構造をし、それぞれ内側の世界は、その世界が自ら持つ自己展開則で外側の世界を超え、より高く広い次元の世界へと成長発展するようで、確信はありませんが、そこには何か必然性があるのではと。

ただし、内側の世界の成長発展も越えがたい限界があります。それは母胎の外側世界の自己展開則に制約されます。こころ(心の世界)は生命(生物世界)の自己展開則(自然淘汰)に制約され、生命(生物世)は宇宙(物質世界)の自己展開則(終焉)に制約され、内側の世界が高い次元世界へ成長するには限界があることです。

 

 一般的に、宇宙(物質世界)は無機物の世界、生命(生物世界)は有機体です。

無機物:有機体以外のもの

     有機体:全体が相互に関係を持ち自ら組織化し統一する体系

無機物の世界、宇宙(物質世界)で連続していながら、まったく断絶している矛盾現象「特異点」が起き、化学反応で生命(生物世界)は誕生しました。

そして、有機体である生命(生物世界)に新たな矛盾現象が発生し人間の心の器の中に特異点“こころ”(心の世界)が開かれ広く高い次元へと成長発展しています。

有機体である二つの世界「生命(生物世界)・こころ(心の世界)」は、有機体という関係を分割したりすると全体の相互関係は破れ世界そのものの本性を失います。

ですので有機体を単なる「要素の集合」として理解はできず、全体を部分に還元することはできません。生物という有機体は壊されるとその生命は止まり求めていた生命は消え失せ、そこに残るのは生命の要素としての物質が残るのみです。そして心の器も生物の脳が機能不全を起こすと心の器の働きは消え失せ、残るのは生物体の要素としての脳内中枢神経細胞の網目のみになります。

ですので有機体の本質というのは、宇宙(物質世界)は物質と物質の間に潜んでいる「特殊な関係」であり、心の器は神経細胞の間に潜む「分割不可能な関係」です。

この「特殊な関係」というのは、宇宙・生命の世界を構成する「要素」自身が持っている再帰的なもので、宇宙(物質世界)を構成するのは基本要素「素粒子」、ここでの特殊な関係は「万有引力」を指し、生命(生物世界)を構成するのは「核酸分子」、ここでは「遺伝子」が特殊な関係ということになります。

 

人間の心の器には新たな世界“こころ”(心の世界)が開かれています。

あらためて、私たちはこの自分自身の世界をしっかりと探求すべきと考えています。

なぜなら、初期的ですが人間の心の器に似たような新たなAIartificial intelligence 人間の知能を持つ機能)を人間は作ったからです。