忘却への回帰 -8

東京都渋谷区 塚崎 義人

 

「かたよらないこころ、こだわらないこころ、とらわれないこころ、

ひろく、ひろく、もっとひろく〜〜〜」

薬師寺元管長・故高田好胤師

 

源流-8(心の世界)

 

 有機体は、全体が相互に関係を持ち、自ら組織し統一する体系です。

現在のところ、有機体の世界として実在を確認されているのは、生物世界(有形の有機体)と心の世界(無形の有機体)の、二つだけです。

 

     有形の有機体(生物世界)    無形の有機体(心の世界)

特異点・・・・自己複製        ・・・・こころ (統 覚)  

要 素・・・・核酸分子        ・・・・表 象 (立体像)

体 系・・・・自己増殖        ・・・・自己回帰(経 験)

展 開・・・・自然淘汰        ・・・・意 思 (自 由)

 

      *特異点 :矛盾現象の    “発生点”

      *要 素 :全体を構成する  “基 本”

      *体 系 :全体の仕組みを  “統 一”

      *展 開 :たどるべき    “終 焉”

 

 心の世界は、もともと生物世界にとって危険なものとして登場しました。

生物世界は体系維持のため、心の世界から反射行動を切り離し、快感的感覚を導入し、本能行動を取り戻させ、子孫保存(自己増殖)を維持し自然淘汰で滅び去ります。

でも、心の世界は滅び去ることは肯定しません。また逆に、自身で滅び去る(自殺や安楽死)こともいといません。さらに「死」ということを知ってしまったのも思わざる危険な誤算のひとつです。

 

 人の一生は限られ、心の世界を再び構成するには限定期間(一生)しかなく、再構成は心の器の記憶(ゼロ地点)からの再スタート(リセット)となり、人柄や人格というものもあくまで自らが育てます。社会に蓄積されている文化的・遺産的な叡智も「心から心へ」と受け継がれるので、生物での親子の血液関係(遺伝子)や地域的人々や人種的なものは二次的なもの、まったく別な個体・別な社会・別の世代へと受け継がれます。

 

人々は、生物世界の集団優先の強靭さ、心の世界の個人尊重の脆弱さを併せ持ち、二つのルールのもとで社会生活を営んでいます。でも、すでに人は心の世界の住人として移り住んでいることをもっと認識し、生物世界と心の世界という断絶した別々の世界が厳然とあることを、二つには大きく食い違う自己矛盾の問題があることを、さらに私たちは二つの世界があるという認識が薄いことを、そして二つの世界のどちらかが止どまることは人として終焉となることを、そのことを真剣に考えてみなければなりません。

 

 心の世界をこれからより大きく開かせ展開させるには、自由奔放な人の意思に制限を加えるしっかりとした規範則が必要不可欠ですが、いまだ、はっきりとは見えてきていません。遠い昔、歴史的な人々の中に生物世界から心の世界へ完全に飛躍し超越された方々がいたのは確かで、人と他の生きものと、はっきり違うのは火や道具を使うということよりも超越された方々がいたことです。近年、心の器に似た初期的な有機体AIartificial intelligence 人間の知能をもつ機能)も急速に成長し始めようとしています。

 

心の世界は、さまざまな試練を経ながら再び特異点(裂け目)が発生し、もう一つ越えた世界へと飛躍し超越する方々がでる可能性があるかもしれません。

推論ですが、私たちが心の世界から超え出ない限り規範となるものは見えないのかもしれません。心の世界から超え出ることは可能でしょうか?

 

 “たどるべき普遍性”

物質世界・生物世界・心の世界で、どの世界にもあてはまる最善な考え方!

 

次回より、「自己回帰(ふりかえり見つめなおす)」を探求していきます。