まず大阪を副首都に!

東京都小平市 小俣 一郎

 

 『大阪都構想』を最大の争点として争われた大阪府知事・市長のダブル選挙は、大阪維新の会の吉村氏と松井氏が圧勝した。事前には松井氏の落選を予想する報道もあっただけにその票差には驚いた。

しかし、ではこれで大阪都構想実現への道が大きく開けたのかというと、なかなかそうはいかないようである。大阪市議選で単独過半数を獲得できなかったからだ。

大阪府知事と大阪市長のダブル辞職・入れ替え立候補という奇策は、同時に行われた府議会選挙・市議会選挙でも相乗効果が大いにあったようで、大阪維新の会の議席は、府議会は11議席増の51議席で定数が88なので過半数を超え、また市議会でも5議席を増やし40議席とした。しかし、市議会の定数が83なので過半数には今一歩というところで届かなかった。

2015年5月に否決された「住民投票」を再び実施するためには、大阪府議会と大阪市議会の双方での議決が必要となるが、過半数に届かない大阪市議会では他党の協力を得なければならず、それは簡単ではない。松井氏の「丁寧に進めたい」との言葉はそれを如実に表している。

また、たとえ「住民投票の再実施」ができたとしても、賛成票が必ず反対票を上回るかも疑問である。選挙の記事を読むと、「大阪都構想には反対だが知事選・市長選は維新に入れた」という人もいるようで、今回の票数がそのまま反映するとは限らないからだ。

そして、もし住民投票で可決され大阪市の廃止と特別区の設置が決まったとしても、それで大阪都と特別区の関係が東京都と23区のようになり、大阪が発展するのか、という次の疑問も出てくる。

まず、堺市という政令指定都市の存在である。この大阪都構想は、府と政令指定都市の二重行政を解消することを目的としているが、大阪市が廃止され特別区が設置されたとしても、堺市は政令指定都市として残るわけである。その時、新しい大阪都と堺市の二重行政はどうなるのだろうか。大阪都構想が当初は大阪市と堺市の両方を廃止して特別区にすることを目指していたのはその問題があるからではないのか。大阪市に比べれば規模が小さいとはいえ、堺市も立派な政令指定都市である。

 またその規模の問題だが、人口を例にしてみると、東京23区には東京都の約70%の人口が集中している。一方、大阪府における大阪市の人口は約30%で3分の1にも満たない。それで大阪都が東京都並みの影響力を持つことができるのだろうか。

 このように改めて考えると、大阪都構想はなかなかの難問である。

 

そしてそれならば、大阪都構想はひとまず置いておいて、大阪を正式な『副首都』にすることに尽力してはどうだろうか。

副首都も橋下大阪府知事時代から目指してきたものであり、現在、大阪府にも大阪市にも「副首都推進本部」がある。まずそちらに注力することを宣言してはどうだろうか。

 昨年11月、2025年に「夢洲」で大阪万博を開催することが決定した。大阪府と大阪市はこれを大阪活性化の起爆剤にしようとしている。そしてそれに合わせて「夢洲」でのカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業も目指しているという。しかし、カジノについては反対意見も多いのではないのか。

 ならばこの際、そこに「IR」ではなく、『副首都』を建設することを国に提案してはどうか。

東京での大規模災害に備えるため、首都機能のバックアップの必要性が叫ばれ始めてからかなりの年月が経つが、一向に本格化していない。しかし、首都直下地震はいつ起きてもおかしくないと言われており、その必要性は日々増している。富士山の噴火という心配もある。

 そこで、大阪湾の人工島である夢洲に、首都圏直下地震の際は首都のバックアップ機能を果たし、なおかつ、南海トラフ地震の際にはその対応の司令塔になる機能を持った、地震にも津波にも台風にも強い副首都を、それこそ日本の技術の粋を集めて、早期に建設するのである。

 副首都であれば、大阪都構想には反対の人も賛成するのではないか。また強固な副首都ができることは国の安全保障においても重要なことであり、多くの国民の賛同も得られるのではないだろうか。

 大阪万博を契機に大阪を活気づかせるのであれば、カジノではなく、副首都機能と最新鋭の防災機能を備えた建物群の方が何倍もの効果があるのではないか。新しい大阪のシンボルとしてもよりふさわしいだろう。そしてそれが実現すれば、大阪都構想自体も次の選択肢として浮上してくるのではないだろうか。