安倍政権ではない自公政権
東京都小平市 小俣 一郎
安倍一強政治の弊害が顕著になっている。以前ならその一つ一つで内閣が総辞職しているような問題がいくつも噴出しているが、安倍内閣はまだ倒れていない。いまのところ倒れる気配もない。あまりにも議員数が違うので、野党は安倍内閣を追い詰めることができず、結局最後は数の力で押し切られてしまっている。
上記は、昨年の6月に書いた文章「権力を物理的に分ける」の冒頭部分であるが、残念ながら1年たっても同じ状況が続いている。いや状況はさらに悪化し、新たな問題も噴出している。この間、大臣が辞任する事態もあったが、安倍内閣は数の力での国会の封じ込めをさらに強めている。今回の老後の生活不安の問題でも自ら諮問した審議会の報告書を麻生担当大臣が受け取らないという異例の対応でその議論に蓋をしようとしている。情報を隠し、問題の究明を妨げ、また他の方向に国民の目を向けさせて、国民が忘れるのを待っているかのようである。
このような状況ならば、本来なら野党への政権交代の機運が高まるところであるが、2014年の強行解散による総選挙に敗北した民主党はバラバラになり、現在の野党は政権の受け皿としてはまだ国民に認知されていない。政権候補として与党に対抗する勢力になるにはもう少し時間が必要だろう。ならばこの異常事態を打開するにはどうしたらよいのか。自公政権内における政権の交代しか残っていないのが現実ではないか。
議論を避けているために問題点が深掘りされず、他よりはましというゆるやかな理由で安倍内閣の支持率は高水準を維持しているが、議論を避け続ける姿勢は問題をさらに深刻化させてしまうだけである。森友加計問題以降、安倍内閣はどんどんとおかしくなっている。この1年も悪化の一途である。安倍内閣が継続すればするほど日本の政治システム自体が壊れていってしまうだろう。
安倍首相は何かにつけて5回の国政選挙で支持されたと強調する。それは自らの思惑で衆議院を解散して、議員の任期を無視して、勝てるときに総選挙を強行した結果でもあるが、5回勝ったことは厳然たる事実ではある。それを政権運営の後ろ盾にすることは当然だろうし、それが安倍一強の源泉でもある。つまり安倍内閣を止めるには、これ以上の政治システムの劣化を防ぐには、「国政選挙で負けた」という事実を突きつけることしかないのであろう。
幸か不幸か7月の参議院選挙は与党対野党の政権選択選挙ではない。7月の選挙で与党勢力の獲得議席が半数を割り込んでも、参議院は半数改選でしかも3年前に与党が大勝しているので与党が過半数割れする可能性はない。つまり、政局の混乱を心配することなく安倍内閣を止めることができるのである。
もし与党が半数割れをしたら、6回目の国政選挙では支持をされなかったということで、安倍内閣は大きく揺れることになるだろう。12年前のように安倍首相はすぐに政権を投げ出すかもしれない。少なくとも安倍内閣不支持という直近の選挙結果を受けて参議院の議論は活発化し、これまで隠そうとしてきた問題が議論の俎上に載ることになるだろう。そうなれば、遅かれ早かれ議論に耐えられなくなって安倍首相は退陣し、新たな自公内閣が誕生するということになるのではないか。
新しい自公内閣が安倍内閣の諸々の問題点を軌道修正する。これがいま一番現実的な改善への道ではないだろうか。7月の参議院選挙で無党派が動き、与党が半数割れするようなことが起きれば、新しい道が開けてくる。