続・イベルメクチンの承認を急げ

東京都小平市 小俣 一郎

 

8月5日、東京の新規感染者は初めて5千人を、また日本全国の新規感染者も1万5千人を超えた。新規感染者はここにきて急速に増え続けており、東京で1万人を超えるのも時間の問題と予測されている。重症者も「割合」は減ったとはいえ、分母が増えているので、「数」は増える傾向にある。

このような状況で、8月2日、政府はコロナ感染者の入院を制限する方向に方針を大きく転換した。これには野党だけでなく与党からも批判が出て、5日に一部修正したが、基本的な方針は変わっていない。現実問題としてベッドが足りない、人手が足りないということだろう。全国各地で4月5月の大阪のような状況が発生するのだろうか。

菅首相が対策の切り札として推進したワクチン接種も、ワクチンの不足という壁にぶつかり、今回の状況を抑えるには至らなかった。

治療薬については、厚生労働省が7月19日、新型コロナウイルス治療薬として中外製薬が申請していた「抗体カクテル療法」を特例承認した。国内で使える治療薬としては4つめだが、軽症者向けは初めてだ。海外で行った治験では入院や死亡のリスクが7割減ったとのこと、菅首相もこの新しい治療薬の使用を推奨している。

ただこの抗体カクテル療法は、点滴で1回投与することになっていて、医療機関で受ける治療で、しかも症状が出てから速やかに投与することが必要とされている。また高額でもある。軽症者向けの治療薬といっても簡単に使えるものではないようだ。

一方、2回目の緊急事態宣言のとき東京都医師会の尾崎治夫会長が、主に自宅療養者の重症化を防ぐ狙いで緊急使用を提言した抗寄生虫薬「イベルメクチン」は、飲み薬で、しかも1回必要な量を飲めばよいと簡便で、特許が切れているので非常に安価。また、抗寄生虫薬として世界中で広く使われているが重篤な副作用はほとんどないといわれている。

以前にも緊急治療薬としてイベルメクチンを早期に承認し、広く使用することを提案したが、2月の衆院予算委員会で「日本にとって極めて重要な治療薬と思っていますので、最大限努力させていただきます」と前向きに答えたにもかかわらず、その後、菅首相がこの件で「努力」した形跡は見当たらない。

このイベルメクチンは現在でも適応外使用ができ、使用している医師も多くいるが、残念ながら、米メルク社が生産に対して非協力的で、使用したくても手に入れにくい状況になっている。

またイベルメクチンの治験は、これについても米メルク社の協力はなく、なかなか進んでいなかったが、幸い大手医薬品メーカーの興和が大村智博士の要請で協力を表明し、7月1日から治験を開始していて、今年中には治験を終えたいとしている。

しかし、いま事態は急変している。悠長にあと4か月待っていていいのだろうか。政治決断をして早急にイベルメクチンを特例承認すべきではないのか。特例承認をすれば、あるいは特別に使用を認めれば、興和がすぐにでも量産体制に入ってくれるだろう。

8月2日のテレビ番組を見ていたら、尾崎会長が「個人的にはイベルメクチンを緊急使用してもいいと思っている」と発言されていた。尾崎会長はイベルメクチンを活用したいという思いをまだ強く持たれているのであろう。政府はなぜその思いに応えないのだろうか。

 河野太郎ワクチン担当相は7月31日夜のインターネット番組で、新型コロナウイルスのデルタ株による感染拡大について、ワクチン接種だけでは抑止困難との認識を示し、マスクや手洗いなどの基本的な感染対策の徹底を改めて呼び掛けた。ワクチンだけでは対応は無理なのである。

事態はどんどん悪化している。これからも自宅療養者はどんどん増えてしまうだろう。にもかかわらず自宅療養者に適当な承認治療薬はまだないのである。

 ならば、イベルメクチンを早期に特例承認して、医師の指導の下、自宅療養者に投与し、すこしでも症状を改善させるべく努力すべきではないか。イベルメクチンを使う際には、他の薬と併用するとより効果があるとの情報もある。使用した医師の間での情報交換をより活発に行えばより効果が上がるだろう。

 もちろん、他に有効な方策があれば別である。しかし自宅療養者に対する有効な対策は現在ないのである。早期にイベルメクチンを承認し、積極的に使用すべきである。