国会法の改正
東京都小平市 小俣 一郎
10月3日に、臨時国会の召集期限を定める(臨時国会の召集期限を20日以内とする)国会法の一部改正法案が、立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、有志の会、れいわ新撰組、社会民主党の5党1会派共同で衆議院に提出された。
具体的には、国会法の第三条に『前項の規定により(臨時会召集の)要求書が提出されたときは、内閣は、その提出の日から20日以内に臨時会を召集することを、決定しなければならない。(ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。・・・)』の一項を加えるという内容だ。
これは、9月21日に立憲民主党と日本維新の会の間で今回の臨時国会での「共闘」が合意されたが、その6つの合意事項の内の一つだ。この立憲民主党と日本維新の会の臨時国会での共闘合意は、これまでの国会運営において両党の間には大きな溝があっただけに驚きをもって受け取られたが、この制度的な欠陥が両党の共闘により前進するのであればそれは非常に好ましいことである。
この憲法53条の「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」という条文に期限がなく、何らかの方法で規定を設けることが必要ではないかということは、長年議論されてきた問題であるが、「森友・加計問題」の追及を避けるために、安倍内閣が98日も臨時国会召集の要求書を無視し続けたことでよりクローズアップされた。しかし改善はされず、それ以降も臨時国会召集の要求書の無視は続いた。
安倍元首相の国葬問題等について、8月18日にも臨時国会召集要求書が提出されたが結局国葬の前に臨時国会が開かれることはなかった。この国葬についてはいまでも評価しないという方が多くいるが、もし岸田首相が国会で多くの国民が納得できる説明を行っていれば、国会の承認を得ていれば、国論が二分するようなこともなかったのではないか。
10月17日の衆議院予算委員会で立憲民主党の岡田克也幹事長がこの改正案について質問していたが、岸田首相は「内閣としてどのように応じるかについては、憲法の要請は、合理的な期間内に内閣としてそれに対応しなければいけない、との要請であると認識している」「合理的な期間とは、その時々の政治状況とか、議論されるべき政治課題とかを、その時の内閣が責任を持って総合的に判断し提案させて頂くものと認識している」との基本姿勢を変えることはなかった。岡田氏の「この法案の審議を棚上げしないという決意を示して頂けないか」との問いかけに対してもその約束をすることはなかった。
しかし、この20日という規定は、2012年の4月に決定された自由民主党の憲法改正草案にも「(臨時国会)第五十三条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。」と記載されている。つまり、今回の改正法案は、本来、自由民主党が反対すべきものではなく、むしろ自由民主党が先頭に立って推進すべきものなのである。
国権の最高機関は国会である。その臨時国会の召集が内閣の恣意に左右されるのはどう考えても好ましくない。もし事務的な制約により20日では難しいのであれば、30日に修正するという選択肢もあるだろう。今回は長年の懸案事項を解決する絶好の機会である。自由民主党・公明党両党も審議の先延ばしはせず、積極的にこの審議に参加し、法案の成立に協力すべきである。