関東大震災から100年

 

東京都小平市 小俣 一郎

 

1923年9月1日、関東大震災が発生した。今年の9月1日でちょうど100年になる。

この「関東大震災から100年」を契機に、NHKでは今年1月から「命をまもる 未来へつなぐ」を合言葉にした防災・減災への取り組みを始め、局一丸となって防災・減災に向けた情報の発信を行っている。そのホームページには多くの情報が掲載され、さらに次々と追加もされている。

それに比べて、東京都の動きは、国の動きはどうだろうか。

関東大震災から100年の今年こそ地震対策の必要性を訴える好機だと思うが、活発な動きは感じられない。先日、都庁で行われていた「関東大震災100年」関連の「復興まちづくり展示会」なるものを見に行ったがあまり力の入った展示ではなかった。東京都のホームページにも防災のところに「関東大震災100年」というページがあるが、首都直下地震の危険性を啓蒙するにはお寒い限りである。

国にも内閣府や気象庁に「関東大震災100年」特設サイトがあるが、国として強力に注意喚起をしている気配はない。

コロナ、ウクライナと続き、不安ばかりを煽るのは好ましくないと考えているのかもしれないが、首都直下地震はこれまで築き上げてきた富の多くを一気に失う可能性のある特別の災害である。備え過ぎるということはない。そこをもっともっと考えるべきではないのか。

最も注意を必要とするのが、極度の人口増に伴う、膨大な被災者の発生である。

 改めて100年前との人口の違いを1920年と2020年で比較すると下記のようになる。

 

〇大正9年(1920)道府県総人口ランキング   〇令和2年(2020)都道府県総人口ランキング

1 東京府 369万  6 愛知県 208  1 東京都 1404万  6 千葉県 628

2 大阪府 258   7 新潟県 177  2 神奈川県 923   7 兵庫県 546

3 北海道 235   8 長野県 156  3 大阪府  883   8 北海道 522

4 兵庫県 230   9  静岡県 155  4 愛知県  754   9 福岡県 513

5 福岡県 218   10  広島県 154  5 埼玉県  734   10 静岡県 363

全国  5590万              全国 1億2610万

 ★大正9年の千葉県133万・14位、神奈川県132万・15位、埼玉県131万・16位

 

 これを見れば、いかに首都圏の人口がこの100年間で増えたかがよくわかる。

令和4年5月25日に公表された新たな「首都直下地震等による東京の被害想定」では、都内で最大規模の被害が想定される『都心南部直下地震』では、死者は6,148人、負傷者 93,435人、避難者約299万人、帰宅困難者約453万人という数字が想定されている。東京都だけの数字である。

これだけの人が一度に被災する可能性があるのだが、ではいったい誰がその手当をするのであろうか。これだけの人が避難する場所はあるのか。ペットも多くいる。その対策はできているのか。また100年前とは桁違いに増えた外国人観光客への対応はどうするのか。彼らは地震に慣れた日本人と異なり、大地震が起きたらそれこそパニックを起こしてしまうのではないか。考えだしたらきりがない。

かつて「関東大震災69年周期説」というものがあり、私はそれを知ってから地震についての情報に常に興味を持ってきた。あれから50年。それゆえ私が超過敏なのかもしれない。

私は便利で、多様性のある東京は素晴らしい大都市だと思っている。もし地震がなければ、東京の一極集中をさらに推し進めるのも日本を繫栄させる有力な方法だとさえ考える。

しかし、時間の前後はあっても必ず首都直下地震はやって来る。それは北米プレートに潜り込む太平洋プレートとフィリピン海プレートという3つの地層プレートの上に乗っかっている東京の、首都圏の地質的な宿命である。そしてそのような大都市は世界に類がない。東京のみである。

台風とは違い地震はいつ来るかがわからない。朝来るのか、昼か、それとも夜か。夏に来るのか、冬なのか、晴れた日に来るのか、雨の日か、風の強さは。どのような天気の時に来るかもわからない。そして、いつ来るかによって、どこが震源地になるかによっても被害は大きく変わってくる。

必要以上に恐れるのも問題かもしれないが、いまの東京には、首都圏にはあまりにも人が集まり過ぎている。どこが震源地になるか、またそれがどのくらいまでの規模になるかにかかわらず、それこそ、『これまで人類が経験したことのないような大災害になる』との覚悟を持って、日々首都直下地震に備えなければならないのではないか。