東京都知事選挙が始まった

 

東京都小平市 小俣 一郎

 

6月20日に東京都知事選挙が始まった。

都知事選挙ではこれまで現職が負けたことがなく、しかも前回約366万票を獲得して圧勝した小池氏が断然有利だと思われていた。有力な対立候補が出てくるかどうかさえ疑問視する声もあったが、4月、5月と小池氏が支援する候補や自民党の支援する候補の落選が続き、それもあってか知名度が高く、2010年の参議院選挙で東京都選挙区史上最多の約171万票を獲得した実績もある蓮舫氏が5月27日に立候補を表明。そこから状況が一変し、マスコミ報道等も俄然白熱している。

 

4年前はコロナ禍ということもあり、都知事選挙は盛り上がりに欠けた。有力な対抗馬もなく、4年間の小池都政の検証は乏しかったが、近年小池氏の個々の政策に対する批判も増えており、今回は8年間の小池都政に対する評価も大きな争点となるであろう。

「あらゆる危機から都民の命と東京を守る“セーフシティ”首都防衛です」。小池氏が18日の公約発表の記者会見でまず切り出したのは防災対策だった。防災の必要性をこれまで何度も何度も指摘してきた私としては小池氏が今回の公約でそれを大きく掲げたことには共感するところがある。

ただ少し前に、8年前の「都道電柱ゼロ」の公約について質問されたときに、「センター・コア・エリア(首都高・中央環状線内側の地域)の都道の地中化はほぼ達成しました」と論点をずらして返答していたのは大いに気になった。2022年度末の都道の地中化率は、区部で64%、多摩地区で22%、全体だと46%。つまりゼロではないし、ほぼ達成したとも言えない。2015年度末が38%だから7年でわずか8%の進捗である。今回の公約でも改めて「無電柱化」を掲げているが、ならばその現状を、その難しさを率直に話す方が伝わると思うのだが・・・。

 

また、今回の立候補者は56人とこれまで最多だった前回の22人を大きく上回った。48名分用意した公営掲示板が足りなくなり、49人目以降の候補にはクリアファイル等を渡して対処してもらうという異常事態となった。この最大の要因は「NHKから国民を守る党」が推薦も含めて24人の候補を擁立し、「ポスター掲示場をジャックせよ」戦術を実行したことにある。N国党に一定の金額を寄付すれば、都内に約14000か所ある都知事選のポスター掲示板のうち1か所に内容もデザインも自由なポスターを貼ることができるという戦術だ。奇抜な作戦だが、これは法律の穴を突くもので、現在の公職選挙法では取り締まれないらしい。

N国党党首の立花氏はこれまでにも2019年、2022年の参議院選挙で奇手を使って議席を獲得してきている。しかし今回のは飛び抜けている。その異常さを多くのマスコミが何度も取り上げている。市民からの苦情も多く寄せられているようだ。ともかく、今回の一件で時代の変化に公職選挙法が追い付いていないことが改めて明らかになった。さすがにこのまま放置しておくことはできないだろう。4月の衆院東京15区補選での「つばさの党」による選挙妨害や、妨害動画で寄付を募り収益を上げていた件等への対策も含めて、早急に法改正を検討しなければならない。

 

17日間の選挙戦は長丁場である。これからも思わぬ出来事が起こるかもしれない。

そして8年間の小池都政が改めて本格的に検証され、その継続が望ましいのか、変革すべきなのか、7月7日に審判が下されることになる。