ホームページ(生活者主権の会)生活者通信メルマガ版/生活者通信メルマガ版 Vol-02



<Vol.2>
━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成17年1月14日 Vol.2━━

日本という国家の問題点
                  生活者主権の会 大谷和夫

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━毎月1日・14日発行
          ご意見に関しては
          mineki@taurus.bekkoame.ne.jp
          へメールをください。
          解除に関しては奥付をご覧ください。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 日本には愛国心の欠如、歴史の不在、危機の隠蔽という国家とし
て基本的な問題がある、とカレル・ヴアン・ウォルフレンは指摘す
る。末尾の参考文献を読んで、成る程と賛成する面と、少し解釈が
おかしいのではないかと思う点があった。
 
 彼はオランダ人であるが、日本について情熱的な関心をもち、日
本を観察すると、日本を愛している日本人が十分な数だけいないと
判断している。つまり政治的麻痺状況を克服する為の強力な運動が
日本には欠けており、国の舵取りを安全かつ民主的に行う統治機関
が日本にはない、と見ている。もっと端的に言えば、戦時中は軍官
僚、現在も財務省を中心とする官僚集団が実権を握っており、政治
家が統治できず、国民も問題の本質を見て立ち上がっていないのは、
国家の体裁をなしていないと極論している。
 
 又「左翼」と「右翼」が事ごとに対立し、例えば教育問題など、
全ての国民の将来に決定的重要性をもつ問題に関連した、多くの真
面目な議論の邪魔だてをし続けている。極端に言えば知的麻痺状態
にある。又文化は変えてはならないという思想も馬鹿げている。も
しそうであればその社会は動脈硬化に見舞われる寸前にある、とも
言える。
 
 民主主義下の国家の運営は、市民から成り、市民にコントロール
され、市民によって絶えず監視される。しかし日本の市民には、政
治家教育という、とりわけ大変な仕事がある。民主国家はよき政治
家なしには成り立たない。政治家だけが我々の代表者だからである。
所で日本の知識人と新聞編集者は、全体としてあまりに怠惰で、象
徴的には現状を批判しているとしても、実際には現体制を守る手助
けをしている。
 
 日本の官僚組織と日本国民全体の自己認識は、一般的にかなり貧
しいものであるとウォルフレン氏は見ている。問題は我々が現に生
きている状況のリアリティに繋がっていない。従って日本の実際の
状況とは無縁で、政策を再構築する知的基盤として使える代物では
ない、と批判している。極端に言えば日本には政府が存在していな
いことになる。何となれば、国家として適切な対応を果たしておら
ず、機能不全に陥っているからである。
 
 戦時中の歴史について、ウォルフレン氏は日本の左翼と右翼(自
由主義史観)を両方とも攻撃しているが、私からみると、彼は連合
国の立場で見ており、大東亜共栄圏といった考え方は全く理解して
いないようである。従って事実に基づかずに一部の不祥事を過大に
とりあげ、もっと根底にある白人のアジア植民地搾取に全く触れて
いないのは片手落ちであると思う。もっとも日本人でも大江健三郎
のような恥知らずの自虐的人間が未だに存在していることは情けな
い。又天皇の戦争責任を間接的に論じているのも頂けない。 

 
 又周辺諸国の理解といっても、西欧のような同一文化圏と東亜の
ような異文化圏と同一に論ずることはできない。特に中韓両国の場
合は同氏も認めるように特殊であり、むしろ問題は日本国内の分裂
にあると思われる。南京大虐殺、従軍慰安婦、靖国参拝問題など、
未だに日本国内で分裂している所にむしろ問題の根源があろう。
 
 国を官僚組織だけで運営していく手法は、きちんとした歴史の否
定につながり、結果的には、日本人に仇をなす。アジアや欧米の
人々は、今世紀の前半に対する日本の姿勢には、何か基本的なもの
が欠けているという感覚を、一般に抱いている。何百万人もの人を
死に至らしめ、アジアの姿を変え、中国における共産主義政権の誕
生を助けた行為の罪深さを、十分理解していないようにみえる、と
彼は主張している。日本人が戦争の最大の犠牲者だと考えており、
広島への原爆投下があの時代の最大の悪だったと考えていることを
知ると、欧米人は憤激するといっているが、これらはあきらかに連
合国の考え方であり、植民地帝国主義者の考え方であり、欧米人一
般の考え方として注意を要する。
 
 しかし、問題の本質は、日本には国家を歴史の全体像のなかに位
置づけることのできる政治的存在がない、という指摘は当たってい
る。ただ日本が戦争をどうとらえているかについて、最も明快な見
解を打ち出したのは細川政権である、というのもとんでもない誤解
である。ただし歴代内閣の相次ぐ小出しの謝罪はあきれるばかりで
ある。
 
 広く認められた歴史は、市民に、自らが国家に繋がっていることを
確認する手段を提供する。所が現在、日本の人々にはその手段がな
い。その意味で日本人は歴史をもたない国を構成している。つまり
日本の国は国家としては未完成である。
 
 日本には政治的アカウンタビリティーの中枢がない。日本の社会、
経済、政治構造の最大の病弊は、権力をもつ官僚に対して、政治に
よる有効な支配が存在していない、という事実である。
 
 湾岸戦争を初めとして、日本が外交政策の危機に無知なのは、殆
ど外交政策を持っていないためだと言える。これはアメリカとの極
めて特別な関係という文脈の中でしか理解できないことである。
 
 日本の政治史は、支配権に関する虚構に満ちていることで有名で
ある。実際の権力の所在を曖昧にする伝統がこれほど豊かな国は、
おそらくほかには無いであろう。日本の天皇にまつわる話は、ほぼ
すべて、公式の権力と実際の権力との分離の話である。
 
 「日本というシステム」の最も重要な特徴は、それが「法の枠
外」にあることだ。それを「システム」として機能させているのは、
官僚たちによる権力の恣意的な行使である。この権力は法律に基づ
いていないので、これを司法手続きによってコントロールすること
は不可能である。
 
 多分、日本の民主主義は、昏睡状態にある患者ととらえるべきで
はなかろうか。昏睡状態にあっても、呼吸、心拍、血液循環など、
通常の機能は働き続けている。つまり「昏睡状政治システム」であ
る。民主国家は、民衆の代表である政治家によって支えられる。従
って政治的昏睡状態から抜け出す為には、日本の市民は、日本の政
治家と新しい関係を築いて行くしか道はない。すなわち、政治家は
何を為すべきか、市民の側から明確かつ詳細な指示を与えていくよ
うな関係であるという指摘は参考となる。
 
 日本人が国際社会で得ている不当な評判は、世界に向けて信頼で
きる「顔」を提示できる国家の中枢がないことからくるもので、国
際社会における残念な印象は、今後も広がって行くことになる。又
外からの大きな保護がなくても独立国家として十分やっていけるこ
とを、今世紀の日本はまだ証明していない。同時にアメリカの保護
のもとに、日本が政治的アカウンタビリティーの中枢をもたないま
ま国際社会に存在し続けることも許してきた、という事実も忘れて
はならない。とにかくまともな独立国家をつくる必要がある。

                       2004/12/29執筆 

参考文献:
「なぜ日本人は日本を愛せないのか・・この不幸な国の行方」
カレル・ヴァン・ウォルフレン著 
                      大原進訳 毎日新聞社 1998-03-25

備考:この論分はHPにも掲載しました。

「著者・大谷和夫氏関連のHP」
    http://www.hpmix.com/home/bokujin/
    http://bokujin.kt.fc2.com/
    http://homepage3.nifty.com/ne/ne/bokujin/
    http://www.dohshusei.org/
  など。


━━━生活者通信メルマガ版━━━━━━━━━━━━━━━━━

発行者:生活者主権の会
http://homepage3.nifty.com/ne/se/
(このHPで解除ができます)
       開設:1999年02月23日
★「生活者主権の会」は、年会費「1000円」を納めればどなた
でも入会出来ます
入会ご希望の方は、郵便振込用紙の通信欄に
「FAX番号/E−MAIL」
を記入して、郵便口座番号
「00180−2−117354」
郵便口座名称「生活者主権の会」
に初年度優遇年会費「1000円」を振り込み下さい。
会員には、毎月A4版・12ページの会報「生活者通信」が送付さ
れます。

━━━━━━━━━━━━━━━━生活者通信メルマガ版━━━━


ホームページ(生活者主権の会)生活者通信メルマガ版/生活者通信メルマガ版 Vol-02