<Vol.9>
━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成17年5月1日 Vol.9━━
採点できる公約
生活者主権の会代表 小俣一郎
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『マニフェスト』は、2003年に我が国に初めて登場し、その年の
流行語大賞にも輝いた。
マニフェストとは、数値目標・期限・財源・実現手順などを具体
的に示す「事後検証可能な公約」で、政権公約などと約されている
が、それは、これまでの「何々をします」という抽象的な公約を、
「何を、いつまでに、いくらで、どのように」行うかを具体的に明
記する公約に変えることを意味する。まさに、候補者と有権者との
「契約」である。
このマニフェスト、「政権公約」というと、何か仰々しく、取っ
つきにくいところがあるが、要は、「事後検証が可能な公約」であ
り、有権者が『採点できる公約』と言い換えるとわかりやすい。
もちろん、厳密に言えば上記4つの項目を明示する公約なわけだ
が、それだと、例えば財源を中央政府に握られている地方自治体の
首長選挙では、誰も「ローカルマニフェスト」を書けなくなってし
まう。そこで広い意味では、「マニフェスト」=「事後検証可能な
公約」として捉えられている。
この『採点できる公約』の利点は、言葉の通り、有権者が首長等
の施策を採点できること、つまり、有権者が主役になることである。
これまでの選挙は、言わば「シェフのお任せ料理」のようなもの
で、当選後は、首長等が行うことを受動的に待つしかなかった。そ
れは公約が抽象的だったからだ。しかし、マニフェスト選挙だと、
今度は「メニューの選択」となる。具体的な項目が明記されている
ので、当選後も、それが約束通りに実行されているかを確認できる
わけである。和食を待っていたら、洋食が出てきた、ということは
あり得ないわけで、もしそのようなことがあれば、それは辞任要求
運動へと直結するはずである。少なくとも、再選される可能性は限
りなくないであろう。
もちろん、天変地異によって「マニフェスト」が守れない場合は
あるかもしれない。しかし、その際にも必ず「説明責任」を果たさ
なければならないわけである。
『採点できる公約』の重要なポイントは「期限」である。なぜな
ら、一目瞭然、わかりやすいからだ。
お金がいくらかかって、その財源がどうで、それがどのように行
われたかは、一般住民には容易にはわからない。しかし、いつまで
にできたかどうかは、だれにでも判断できる。注文したのに、一向
に料理が出てこなければ、また、注文と異なる料理が出てきたので
あれば、当然クレームが付くわけである。
4月3日に私の地元、東京都小平市で市長選挙があり、マニフェ
ストを掲げた新人候補が当選したが、50の項目を、半年以内に行
うもの13項目、1年以内に行うもの22項目、2年以内に行うも
の9項目、4年以内に行うもの6項目に分類していた。つまり、新
市長は、半年後、1年後、2年後と有権者の審査を受け、そして、
4年後に再選させるかどうかの最終審判を受けるのである。
財政危機に陥った我が国は、「AもBも」という時代から、「A
かBか」という選択をしなければならない時代になった。
これまでなら財布も豊かだったので、まず和食を食べて、その後
に洋食も食べることができた。要は順番の選択であった。しかも量
が多すぎで、無駄に食べ残しをしていた。また、そのような状況で
は、シェフに任せていてもそれなりの料理が出てきていたので、メ
ニュー自体を問題にする必要があまりなかったとも言える。
しかし今は、和食を注文すれば、当然洋食は食べれないわけであ
る。しかも同じ和食でも、懐と相談してメニューを決めなければな
らない。このような時代に、シェフお任せではなく、メニューの選
択である「マニフェスト」が登場してきたのは、ある種必然なのか
もしれない。
しかし、いくら『採点できる公約』でも、採点をしなければ、絵
に描いた餅である。それではこれまでのスローガン的な公約と大差
がなくなってしまう。マニフェストは民が主役となるための道具、
まさしく、民主主義の道具であるが、「活用してなんぼ」のもので
もある。
この「マニフェスト活性化」の主役として、その審判として期待
できるのが、国政ではシンクタンクやNPOということになるだろ
うが、地方自治体では「議会」が期待される。我が国の地方自治体
は、いわゆる大統領制であり、そのため議会が何をしているのかが、
今一歩よく見えてこない。ところが、マニフェストを掲げて知事が、
市長が当選したのであれば、それを誠実に実行しているかどうかを
監督するのは、地方議会の大きな役割になるはずである。
『採点できる公約』といっても、期限以外は市民にはわかりにく
い。ならば議員が住民に代わってその役割を果たすべきで、そこに
こそ地方議会の新たな存在意義が生まれてくるのではないだろうか。
北川前三重県知事は、マニフェストを『気付きの道具』と強調す
る。マニフェストにより、有権者は「自分たちが真の主役である」
ことに気付き、地方議会はその存在意義に気付くのである。
マニフェスト選挙になると『政策』が主役に躍り出る。『採点で
きる公約』は、まず選挙で、適正、現実性を採点され、次にそれが
実現されたかを採点される。そして、それが次の選挙に間違いなく
影響していくことになる。
政策が主役になれば、「公約は守らなくてよい」などと発言する
ような首相は、即刻退陣を迫られることになるであろう。もし何ら
かの理由で公約の変更が必要なのであれば、首相は国民が納得でき
る説明をしなければならない。それが当然の責任である。
今、マニフェスト選挙が地方自治体の首長選挙に深く広がりつつ
ある。公約を採点することが、地方で広がっていけば、その傾向は
間違いなく、国政にも波及するはずである。
マニフェストによって、日本の政治は大きく変化を遂げようとし
ている。
「著者・小俣一郎氏関連のHP」
http://netdemocracy.kt.fc2.com/
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