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<Vol.14>

━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成17年7月14日 Vol.14━

八ツ場ダムをストップしよう
  −−中央集権による税金浪費と利権の象徴

                    埼玉県所沢市  河登一郎

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━毎月1日・14日発行
          ご意見に関しては
          mineki@taurus.bekkoame.ne.jp
          へメールをください。
          解除に関しては奥付をご覧ください。
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「八ツ場ダム」勉強会のご案内

群馬県の吾妻川流域に4600億円の予算で「八ツ場ダム」の建設
が進められています。
今後の予算増額を含めると1兆円規模の巨大事業です。
税金の無駄遣いとの意見が多いのですが、東京都、埼玉県、千葉県
の知事と議会は「八ツ場ダム」の建設に賛成しています。
そこで現状を正しく認識するため下記の通り勉強会を開催します。
参加資格は問いません。税金の無駄遣いに関心をお持ちの方は
万障繰り合わせご参加下さい。

            記

日時:2005年7月30日(土)18:30〜21:00

場所:新宿区消費生活センター4F
    新宿区高田馬場4−10−17
    JR・地下鉄高田馬場駅下車徒歩2分
    TEL 03−5330−5374

講師:「水源開発問題全国連絡会」嶋津代表
    (元東京都環境科学研究所)

参加費:実費(500円の予定)
     参加希望者は当日直接会場にお越し下さい。

                  以上


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八ッ場ダムをストップしよう
  −中央集権による税金浪費と利権の象徴

                   埼玉県所沢市  河登一郎

 皆さまは「八ツ場(ヤンバ)ダム」という事業をご存知ですか?
当会会員のように、壮大な税金の浪費に反対しておられる方でも、
本事業について詳しくはご存じないのではないでしょうか。以下は、
本事業の概要説明と、現在1都5県(東京・埼玉・千葉・群馬・栃
木・茨城)で反対運動・差止訴訟が行われている背景をご紹介した
い、と思います。

1.本事業の概要:
 (1)場所:群馬県川原湯温泉郷のある吾妻川流域。(2)目的
:最初に計画されたのは昭和27年(52年前)で、目的も時代の流れ
で変わり、現在では、1都5県の1.利水、2.治水が目的とされてい
ます。
 (3)建設費用:去年までは2100億円でしたが、突然4600億円に
増額され、その他水源対策費・起債金利・今後の増額など含めると
1兆円規模の巨大事業です。
 (4)現状:周辺工事は既にかなり進んでいますが、ダム本体は
未着手です。このダムで利益を受けると云う理由で巨額の税負担を
する1都5県でそれぞれ住民訴訟が行われています。私は、埼玉県を
被告とした訴訟に原告として参加しています。

2.反対の理由:
 (「公金支出差し止め訴訟」訴状から要約)(1)必要なくなっ
たこと:この点を詳しく説明するためには、与えられた紙数ではと
ても足りません。以下は「水源開発問題全国連絡会」代表嶋津氏
(元東京都環境科学研究所)が専門の立場から主張された議論の要
約です。
 1.利水面:節水機器の普及・漏水の減少・工場の海外移転などに
より、1990年頃から水需要は漸減しており、これからの人口減と重
なり、今後は水余りの時代に入ること。特に、東京では地下水位が
上昇しており、東京駅や上野駅では浮上防止のため、アンカーボル
トや重しで抑える一方、大量の水を東京湾に捨てています。
 2.治水面:本計画は基準地点で毎秒22千トンの洪水流量が前提で
すが、これは過去50年間最大台風時9千トンより極端に大きい。昭
和22年のキャサリン台風時は17千トンでしたが、これは戦時中の乱
伐で日本中はげ山だらけだった特殊ケース。
 (2)美しい景観と環境が破壊されます:関東の耶馬溪と云われ
る豊かで美しい自然が破壊され、水質悪化・希少生物の減少の原因
になります。
 (3)災害の原因になること:浅間山噴火の溶岩層で浸水に対し
て脆いため、周辺岩盤の崩壊、貯水域付近の地滑りの危険性が大き
い。
 (4)巨額の負担:1.上記の通り日本1巨費のダム。それまでの
2100億円から去年4600億円まで一気に増額されました。建設後にも
操業費。2.実質的な内容説明なく、「国交省が決めたから」「国に
反対すると予算配分上不利」。3.予定価額に対する落札率が軒並み
95%以上は「談合」の状況証拠の塊。
 (5)法律・手続き上の問題点:1都5県で若干異なりますが、
ほぼ共通しているのは、
 1.住民監査請求に対して充分な説明なしに「却下」したこと。
 2.訴訟に対しては、必要性や金額の妥当性などの説明はなく、手
続上の主張(知事は課長に権限委任しているから知事を被告とする
訴訟は無効、河川法上国交大臣の決定に知事は反対権限がないな
ど)に終始していること。

3.皆さまへのお願い:
 (1)本件について勉強して下さい:将来の見通しについては見
方が分かれるにしても、部分的な「聞きかじり」でなく広い視野で
公平に判断して下さい。(2)私たちの主張に納得されたら「反対
する会」へのご支援をお願いします。原告にはもうなれませんが、
会への参加はいつでも歓迎です。
 (3)機会があれば、現地を見てください。鄙びた・美しい温泉
地です。難しい議論以前に、あの美しい渓谷や岩をダイナマイトで
爆破する発想が私には許せません。

4.上田埼玉県知事の姿勢について:
 (1)私は埼玉県民として、前回の知事選挙では上田知事候補を
熱心に応援しました。土屋県政の薄汚い「しがらみ排除」と云うス
ローガンと、衆議院議員時代に「官僚権力の腐敗」を強く批判して
おられた姿勢に共感したからです。
 (2)「八ツ場ダム」に関して、当初は、一挙に2倍以上の増額
に強い不快感を示されましたが、結局は国の主張をそのまま承認さ
れ、現在は「必要」と判断しておられます。しかし「しがらみ排
除」「官僚権力の腐敗」を声高に主張しておられた知事の政治姿勢
から判断する限り、恐らく本件に関しては、一方的な説明しか聞く
機会がなかったか、中央の予算配分圧力には逆らい難いという現実
的な判断をされたのではないかと思っています。
 (3)私は、支持者の一人として悩みましたが、県民・国民とし
ての良心に従って原告として訴訟に参加し、知事にもその趣旨を伝
えました。

5.陳述意見:
 以下は5月11日に埼玉地裁で行われた第2回裁判で私が陳述人とし
て述べた意見です。上記との重複はなるべく避け、持論である環境
保全の重要性と、税金浪費批判に絞りました。特に強調したいこと
は、国土交通省がなりふり構わず進めている全国の巨大ダムの殆ど
が、当会の理念「大きい政府/中央集権を排し、地方分権/道州制
を実現」と完全に逆行することです。「水の安定供給のための水道
広域化」の美名?の下に、多くの地域で近くの水(川・地下水・雨
水)は海に捨て、遠方の巨大ダム建設を正当化し、利権を温存する
構造は、当会の理念の対極にあります。

☆ 意見陳述書要旨
 2005年5月11日河登一郎・私は日頃から、環境破壊と税金の浪費
を止めないとこの国の将来は無いと本気で心配しており、国民の一
人としてこれを止める努力をすべきと愚直に考えています。
 ・八ッ場ダムにつきましては、今までの陳述で、必要性がなくな
ったこと;税金の浪費であること;県が説明責任を果たしていない
ことが指摘されました。私は次の3点に絞って陳述します。

1.環境・景観破壊: 
 (1)景観:自然の宝庫と云われる名勝:吾妻川渓谷の美観が無
残に破壊されます。
 ・・・中略・・・
 悪しき実例が身近にあります。神流川の三波石峡は下久保ダム建
設後美しい景観を失った典型的な悪例です。同地の鬼石町長関口氏
は、「下久保ダムは生活破壊・地域の崩壊・自然破壊を教えてくれ
た」と、その轍を踏まぬよう、本件にも強く反対しておられます。
 (2)砂防ダムによる環境破壊:このダムの周辺に砂防ダムが10
0基前後も!作られるということはあ まり知られていません。国土
を切り刻んで税金をばら撒く体質がここにもあります。環境面で予
想される問題点を列挙しますと、
 1.景観破壊:日本中に数10万基もある砂防ダムが、自然の景観を
壊しています。
 2.生態系の破壊:生物の生息域がコマ切れに分断されるため魚も
鳥も減少します。
 3.海岸線の後退:河口まで土砂が届かず、日本中で海岸線が後退
しています。
 (3)希少生物の減少:略
 (4)水力発電から化石燃料への逆もどり:ダムの上流には東京
電力が発電用水利権を持っており、バイパスを通って下流までにあ
る6つの発電所で水力発電をしていますが、本事業ではわざわざそ
の水利権を買い取ってダムに流す計画になっています。不足する電
源は、石油・石炭・原子力と云ういずれも環境上問題の多いエネル
ギーに逆戻りすることになります。環境へのマイナスはこんな形で
も現れます。

 2.ダム建設に伴う地滑りの危険性:
 (1)ダム予定地の両岸は、2万年前の浅間山噴火時の火山灰泥
流が厚く堆積し、極めて脆弱な地層で現在でも多数の集水井戸で地
下水を常時抜いています。ダムによる貯水が始まると、住民移転用
の代替地も支えを失って連鎖的に地滑りを起こし、崩落する危険性
が高まります。
 (2)ここにも悪しき前例があります。奈良県の大滝ダムです。
貯水開始後の平成15年にダム湖周辺で地盤の亀裂と沈下現象が起こ
り、住民は仮設住宅へ移転せざるを得なくなりました。当然貯水は
中止、ダムは空。税金が更に浪費された上、住民の生活も破壊され
ました。朝日放送の番組の中で建設当時の責任者は、「あれは大分
前のことだから、もう関心はない」と云っています。これが責任者
不在の公共事業の実態です。八ッ場ダムで貯水が始まればもっと大
規模な地滑りが生ずる危険性が高いわけですが、仮に大惨事になり
人命が失われた場合も、責任者は不在です。
 (3)もちろん、この危険性がどの程度かは専門的な分析が必要
です。だからこそ、双方の専門家が全資料を出し合って・オープン
な議論をすることが不可欠なのです。

3.ダム容量及びダム自体の寿命の問題:
 (1)ダムには寿命があります。上流から流れ込む土砂が堆積し、
徐々に埋って行きます。将来の堆積量を予測し100年間は有効貯水
容量を確保する計画 を立てることになっています。
 (2)しかし、実際の土砂堆積量は予測量(ダム建設を正当化す
るため常に低めに設定されます)を大幅に上回ることが多く、天竜
川には12年で91%も埋まってしまったダムの例さえあります。八ッ
場ダムの場合、条件の近い下久保ダムと同条件で専門家が試算する
と、堆砂量は予測値の3倍になり、・・・ 中略・・・利水容量はほ
ぼ50年で半減します。
 この事業は現世代の税金だけでなく、まだ反対するすべさえない
将来の世代からも強奪します。現代に生きる大人として絶対にして
はならないことです。
 (3)このように、このダム事業は上位計画も無く事後の対策も
無い、国も県もその必要性さえ説明できない、税金をばら撒くこと
が目的の計画と云わざるを得ません。発注工事の過半が予定価額の
95%以上で落札されていることは談合の状況証拠です。
 100歩譲って、景気対策・雇用の確保・ゼネコンや 下請け企業・
その間に介在する(薄汚い)人々のために出費を続けることが政治
的に不可避でも、「ダムを壊して植林する」方が健全です。
 ・・・中略・・・
 個々の法文上の違法性については、今後順次代理人を通じて主張
しますが、その前提として強調したい原点を二つ補足します。
 一つは、本事業が地方自治法及び地方財政法の大原則である「最
小の経費で最大の効果」と全く逆行していることです。スローガン
的に云えば、「最大の経費で最小(マイナス)の効果」です。
 もう一つは、私自身の半世紀に亘る思いです。今から半世紀前、
私はまだ多感な法学徒でありましたが、「法文の解釈には大きな幅
がある。実定法判断の大前提には、真善美を愛する価値観と不正を
憎む正義観がその根底にある、法の究極にあるもの、それは自然法
と云う倫理観である。」と、凛として言い切られた老教授の温顔を
鮮やかに思い出しております。爾来半世紀、日本の政治・経済・行
政は、相当汚れてしまいました。しかし、司法の世界には正義の理
想が色濃く残っている・残して欲しい、と切に願っています。


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