＜Vol.19＞

━━━生活者通信メルマガ版━━━━平成17年9月1日　Vol.19━

マニフェスト勝負！
　　　　　　　　　　　　　　　　生活者主権の会代表　小俣一郎

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○事後検証可能な公約
　衆議院の解散が突然降ってきた。
　小泉さんは、マニフェストを理由に解散し、マニフェストを理由
に身内を切り捨ててしまった。
　しかし今回の混乱は、郵政民営化について、自民党が前回総選挙
でのマニフェストの表現を玉虫色のあいまいなものにしていたこと
が原因であり、そもそもの責任は自民党総裁である小泉さん自身に
存在する。

　マニフェスト（政権公約）とは、『事後検証可能な公約』のこと
であり、その語源が「はっきり示す」ということでもわかるように、
それは「数値目標・期限・財源・実現手段などを具体的に明記」し
たものでなければならない。今回の騒動は、マニフェストと呼びな
がら、それがその本質的要件を満たしていなかった結果だとしか言
いようがない。

○初のマニフェスト選挙？
　ただ、遅ればせながら、今回の総選挙では自民党は小泉郵政民営
化案への反対者は公認しないと決めた。欠席・棄権した議員は慌て
て賛成に回り、その本意はともかく、選挙を前に、小泉さんの軍門
に下ることになった。
　また、自民党反対者の選挙区も含め、全ての選挙区に小泉郵政民
営化案に賛成する候補を擁立し、選択肢の一つではあるが、それに
ついてははっきりさせた。その手法、その姿勢等々についてはいろ
いろと議論があろうが、これにより、マニフェスト的にはよりはっ
きりしたことは事実である。

　総選挙では、前回2003年に初めてマニフェストが登場したが、ま
だ国民の関心は低かった。その後マニフェストは首長選挙には欠か
せないものとなり、マスコミでも、マニフェストという言葉が盛ん
に使われ、国民の認知度も高まった。
　また今回の小泉さんの一連のパフォーマンスにより、マニフェス
トというものがどういうものかということがより国民に伝わったと
も思われる。その意味では、この総選挙が実質、初のマニフェスト
選挙と言えるのかもしれない。

○本当にマニフェスト？？
　8月19日に自民党のマニフェストが発表された。ところがそこに
は各政策に対する具体的な数値目標がほとんど掲げられていない。
これでどうやって国民が「事後検証」できるのであろうか。事後検
証ができるからこそマニフェストなのではないか。
　
　自民党は与党である。国の情報を一手に握っているわけである。
それなのに目標値を明らかにしないのは、国民をばかにしていると
しか言いようがない。「数字のばらまきをやって、青い鳥が飛んで
くるような錯覚を与えることは絶対にやらない」との発言があった
が、国民が求めているのは、自民党が政権を継続した場合に予想さ
れる誠実な目標数値である。マニフェストと呼ぶ以上、それを国民
に提供することは当然のことではないか。これでは、まともに数値
を出すと選挙にはとても勝てないので出そうにも出せない、とでも
考えるしかない。

○単品料理で、しかも１年で辞任？？？
　しかも、小泉さんは今回の選挙を「郵政民営化選挙」だと強調す
る。小泉さんにとってはそれが一番の課題であり、解散直後の高い
支持率を維持して選挙を有利に展開するためにも、小泉郵政民営化
への賛否を主題としたいのであろう。しかし、総選挙は今後４年間
の日本の政治を決定する選挙であり、それが単品料理で決められる
わけはない。あくまで、自民と民主のフルコースが最大の選択肢と
なる。

　２年前も、自衛隊のイラク派遣について選挙戦ではまったく発言
していなかったが、マニフェストに掲げてあることを理由に小泉さ
んは派遣に踏み切った。小泉さんはその本質をわかっていながら、
あえて国民に単品料理だと宣伝しているのであろうか。もし国民が
「小泉マジック」に踊らされていると、そのツケは間違いなく国民
のところに返ってくることになる。

　また小泉さんは、たとえ過半数をとっても１年後の総裁任期満了
時には退任するとも言い出した。今後の４年間を問われているのに、
１年後は知りません、とはどういうことであろうか。小泉さんは、
自分の任期中は消費税の引き上げは行わないが、後任の選択権は奪
わない、と常々言明しているが、すると、もし与党で過半数を獲得
した場合、１年後には消費税の引き上げの検討が開始されるという
ことであろうか。確かに、消費税を含む税体系の抜本的改革の実現
とは書いてある。ならばしっかりと国民にそれを伝えるべきではな
いか。

　自民党は、今回の騒動をみても明らかなように、多様な考えの持
ち主が集まった政党である。もし小泉さんが１年で辞めてしまうの
であれば、次はだれがどのように担当するのであろうか。その政策
の継続性を担保するためにも、また、自らの政党をまとめるための
手段としても、マニフェストには数値目標も含めて、より具体的な
内容を盛り込む必要があったのではないか。

○マニフェストは、国民をも縛る、国民との契約書である
　ともかく、国民は「小泉自民党」か「岡田民主党」を選ぶことに
なる。「自民党」しか選択肢がなかった時代と異なり、国民は現在、
政権を選択することができるのである。

　マニフェストは、政党と国民との『契約書』でもある。
　今回の騒動でも明らかになったように、具体的な内容が明記され
た分だけ、それは政党を拘束し、所属議員を拘束し、また国民自身
をもより強く拘束することになる。単品料理を頼んだつもりでも、
出てくるのはフルコースの料理であり、フルコースの代金が請求さ
れることになる。国民はその自覚を強く持って選択をしなければな
らない。

　今後４年間の国政をどちらのマニフェストに委ねるのか。
　「契約書」の内容をいかに正確に把握し、いかに正しい選択を行
うか。まさしく、国民もその力量を問われている。



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