生活者主権の会生活者通信2001年12月号/08頁..........作成:2001年12月23日/杉原健児

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George W. Bush:
この単細胞で野蛮なエコノミック・アニマル

埼玉県 河登一郎

1.環境保護政策の大幅後退と軍備増強:        
  ・外国の大統領の選挙だから、ブッシュ/ゴア二
    大候補の論戦を正確にフォロウしていた訳では
    ないが、大雑把に云って政策の重点はゴアが環
    境保護、ブッシュが経済優先だったことに大き
    な間違いはないと思う。                    
  ・案の定、僅差とは云え当選した後のブッシュの
    政策は、アメリカの良識が築いて来た一連の環
    境政策を "経済に悪いから" と大幅に後退させ
    る一方、軍事政策を積極化するなど危険な選択
    を息つく間もないほど打ち出している。      
    具体的には、                              
  1)環境政策: (1)クリントンの残した環境関連
    規制と命令を全面凍結 (2)温暖化防止京都議定
    書からの離脱 (3)02年度環境関連予算大幅削
    減 (4)アラスカ自然保護区での石油・ ガス開発
    の再開 (5)原発推進・石炭火力発電増設等 (6)
    そして "最大の環境破壊" たる戦争。        
  2)軍事政策: (1)ABM条約改訂宣言(ミサイ
    ル強化) (2)CTBT(核実験禁止条約)批准
    見送り (3)生物兵器禁止条約議定書案拒否 (4)
    小型武器(ピストル・ライフルなど)規制の行
    動計画に反対 (5)核兵器予算増額 (6)そして、
     "正義のための" 戦争。                    
  ・これらの政策すべてを解説する知識も紙数もな
    いが、京都議定書問題に絞って云えば、ヨーロ
    ッパ諸国は(日本も渋々)地球温暖化は既に不
    可避故、地球の将来のためには米国抜きでも実
    行に移さざるを得ない、と決断したことから見
    ても米国のエゴは目に余る。世界で最も豊かで、
    温暖化原因たるCO2最大の排出国が、である。
                                              
2.景気悪化と "奥の手" :                    
  ・当選後も、米国経済は厳しい状況が続いている。
    即ち、 (1)株価低落 (2)ITバブル崩壊 (3)消
    費低迷 (4)失業率アップなど。そこでブッシュ
    新政権が取った経済政策は、前項を含め景気刺
    激のためにはなりふり構わぬ姿勢だったことは
    周知の通りで、とにかく "経済・けいざい・エ
    コノミー" 、そして" 開発と軍備" 。        
  ・テロ以前から、囁かれていた裏話がある。 "ブ
    ッシュはいずれ戦争を起こす" 。理由は簡単で
    ある。大事に至らない戦争は破壊と云う「最終
    需要(政府支出)」を創出することを通じ、  
     "Good for the economy" 。事実、老朽化した
    武器・弾薬を大量に "処分" し、新兵器を実験
    し、数兆円に上る新規発注に結び付けた。    
  ・ブッシュの名誉のために云えば、この裏話の真
    偽は証明できない。諸々の情報からの推測に過
    ぎない。しかし、無数にある状況証拠から、今
    回のテロを(こんな大事になるとまでは思わず)
    戦争の口実のために "看過した" 可能性への反
    証もまた困難であろう。(私自身、テロ以前に
    この話を複数の知人にした)。              
                                              
3.9/11のテロとそれ以後の対応について:  
    これが "正義" か?                        
  ・9/11のテロが許すべからざる犯行であるこ
    とに議論の余地はない。イスラム原理主義に共
    感する人が多いとも思えない。              
  ・問題はその後の米国(及び日本を含む多くの国)
    の対応である。法律的にも、政治的にも多くの
    複雑な問題を含んでいるが、なるべく普通の人
    (生活者)の視点で単純化し、普通の人のコト
    バで整理してみよう。                      




  1)事実上の "報復" 行為は現代法理では(国内
    的にも国際的にも)許されない。江戸時代のよ
    うな敵討ちやカウボーイのリンチが許されると、
    この世は文字通り弱肉強食の無法状態になる。
  2)犯罪人に対しては、司法が法とルールに従っ
    て裁く、と云う "法の支配" が無法・無秩序・
    混乱を避けるために、人間の経験と知恵が生ん
    だ成果である。                            
      尤も、国際犯罪に対する刑事裁判制度は完備
    してはいない。国際刑事裁判条約に対し、米国
    を含む多くの国が国家主権の侵害として反対し
    ているためである。しかし、このような時にこ
    そ、国連があり、国際司法裁判所があり国際法
    廷も開ける。過去の国際紛争において、国連軍
    が国連決議と国連ルールに基づいて世界警察の
    機能を果たしてきた実績が何回もある。(国連
    憲章33条:いかなる紛争も…平和的に解決しな
    ければならない)                          
  3)(オサマ・ビン・ラデイ ンとアル・カイダが
    本当に犯人だとして)米国が、犯人でも容疑者
    でさえない・引渡しを拒否しただけのアフガン
    を・犯人引渡し条約もないのに・平和的解決の
    努力も省き・宣戦布告抜きで・一方的に爆撃を
    開始した。しかも、殆ど反攻出来ない相手に対
    してあの狂ったような絨毯爆撃による殺戮が、
    そして、何回もの誤爆により無辜の住民を殺傷
    し、何百万人もの難民を病気・飢餓・凍死の危
    険に曝していることが、 "邪悪に対する正義の
    戦い" だろうか?                          
  4) "悪を懲らす正義" とは、漫画の西部劇ヒー
    ロー並みの表現だが、そうとすれば、一方的に
    追出した4百万人ものパレスチナ難民に対する
    イスラエルのテロは悪ではないのか?諸悪の根
    源たるパレスチナ問題を放置したまま、報復戦
    争でテロが無くなると本気で考えているのだろ
    うか?                                    
  5)現在、アフガンで繰り広げられている攻撃は、
    数匹の子ネズミ(人を噛む恐れあるネズミでは
    あるが)に、猫どころか巨大なライオンが(我
    がライオン首相を含め)何十匹も跳びかかって
    いる図である。勝敗の行方は見えている。(11
    月12日現在)                              
  6)巨大なライオンに正面から当って勝てる者は
    いない。その代り、陰湿なテロネズミが、ねず
    み算の如く世界中に広がる恐れは大きい。ブッ
    シュは更に居丈高になって報復戦争を続けるの
    だろうか?地球の人口爆発はこんな悲劇を伴わ
    ねば収まらないのだろうか?                
  ・私の浅薄な米国史の知識からの判断ではあるが、
    この人は史上最低の大統領の一人ではあるまい
    か?こんな大統領を" 直接" 選んだ米国民の責
    任は重い。                                
                                              
4.日本政府の対応について:                  
  ・詳細はべつの機会に譲るが、上記からほぼご想
    像頂けると思う。                          
  ・頼まれてもいないのに、御用聞きで憲法違反の
    総仕上げをして、心ある人に軽蔑された上に、
    イスラム諸国へのクリーンハンドを永遠に失っ
    てしまった。                              
  ・ "自分が安全な場所にいたのでは、本物の国際
    貢献ではない" は反論はあるにせよ、一つの見
    識ではあろう。しかし、それは憲法9条をオー
    プンに議論した後、国民投票で憲法改正した上
    での選択肢の一つである。                  
  ・特殊法人改革も外務省機密費も、掛け声だけで
    何も動かないわけである。この程度の人物に  
    「改革」の意欲だけは本物と期待した(通信8
    月号)自分の不明が恥ずかしい。            

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