環境問題特別委員長を引受けながら、当会として
活動らしい活動をしていない。私自身は環境問題に
いくつかの接点で深く関わっているのだが、当会と
しての効果的な活動を提案できないまま何ヵ月か経
ってしまった。その罪滅ぼしを含め、これから時々
環境問題について書いてみたい。通信の紙数に余裕
がある時、2〜3ヵ月に一回ぐらいのペースでいく
つかの環境問題について簡単な解説と問題提起を試
みたい。今回はその第一回目として「地球温暖化問
題」を取り上げる。
1.「地球温暖化」とは:
(1)まず、グラフを見て頂きたい
これが産業革命後期以来 150年にわたる地球平均
気温の推移である。リクツを並べる以前に温暖化
が加速度的に進行していることが見て取れる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の
分析によれば、21世紀の 100年間現在の傾向が続
くと、2100年には1990年比+5.8℃、対策を講
じても+1.4℃上昇することになる。20世紀に
温暖化が進んだと云っても 100年間で+0.6℃
(日本は1℃)だから、この数字は既に手遅れ!
かも知れないほど深刻なのである。
(2)平均気温だけではない。海温の上昇、氷河の後
退、異常気象(豪雨・洪水・旱魃等)、海面上昇
など、一部は既に現実の問題になりつつある。
その結果として、砂漠化、塩害、森林減少、森
林火災、植生の変化、病虫害異常発生、新種伝染
病の蔓延など、徐々に、しかし確実に進行する。
(3)これらの現象が、人口爆発、経済成長・開発、
南北格差、戦争など、人間社会の病理と結びつく
結果を想像して、 100年後いや30年後の地球に危
機感を抱くのは杞憂だろうか。
2.原因:
・産業革命以来、活発な産業活動と" 豊か" になっ
た生活を反映し、Co2,メタン、フロン類など
の温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度
が高まり熱の吸収がふえた結果と云われている。
・勿論、科学の前提・予測に誤差・限界は避けられ
ないが、極地の氷(の中の空気)や地層分析など
で過去一万年位までの推計はかなり正確に可能だ
し、将来についても気象学だけでなく、あらゆる
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先端科学の成果を世界中の第一線科学者が12年も
かけた研究結果がIPCCの上記グラフである。
・もう少し細かく見ると、温室効果ガスの内訳は、
N2 O6%、Co2 60%,メタン20%、フロ
ン他14%;Co2 排出国別では米国22%、中
国14%、ロシア7%、日本5%、インド4%、
それぞれ2〜3%など;国民一人当たりでも、米
国が5.6トン/年と突出している(日本は2.
5トン/中国は0.7トン);産業別(日本)に
は産業部門(工場など)40%、民生25%、運
輸部門22%、その他 13%。それぞれの部門
で抜本策が不可欠である。
3.対策:
・自然界(動植物:生態系)は既に対応を始めてい
る。人間が一番鈍感である。
・例えば、ヨーロッパの山岳植生はこの10年間で平
均1M上昇、米国西岸の蝶の一種はメキシコ側で
減少し、北で増加、日本でも(イネの北上は人工
的品種改良の成果だが)自然界でも徐々に北上が
進んでいると云う。桜の開花時期、梅の狂い咲き、
昆虫の生活圏移動など身近にも小さな例は多い。
・人間の対策については、稿を改め、何回かに分け
て論じたいが(京都議定書、拡大生産者責任、環
境税、ダイオキシン、リサイクルの是非など、問
題は無限にある)問題の重要性を示す例に一つだ
け触れる。
・京都議定書では温暖化を防ぐ方策として、先進国
から排出される温室効果ガスの削減目標を定めた。
具体的には2008/2012年までに1990
年実績比EU諸国は8%、米国7%、日本6%を
減らすことを約束したのだが(その後アメリカは
ブッシュ大統領が" 経済に悪い" ことなどを理由
に離脱してしまったことは有名である)、EU諸
国では温暖化に本気で対応するためには数%どこ
ろではなく長期的には60%もの削減が不可避と
して、厳しい環境政策を採用始めた。
6%の削減でも大変なのに(日本の1999年実績
は1990年+10%)、60%削減はハンパではな
い。産業構造・ライフスタイル。更には前提とし
ての価値観そのものの見直しが要請されるのであ
る。
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