生活者主権の会生活者通信2002年01月号/09頁..........作成:2001年12月24日/杉原健児

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地球温暖化問題について(環境問題シリーズ・その1)

埼玉県所沢市 河登一郎

  環境問題特別委員長を引受けながら、当会として
活動らしい活動をしていない。私自身は環境問題に
いくつかの接点で深く関わっているのだが、当会と
しての効果的な活動を提案できないまま何ヵ月か経
ってしまった。その罪滅ぼしを含め、これから時々
環境問題について書いてみたい。通信の紙数に余裕
がある時、2〜3ヵ月に一回ぐらいのペースでいく
つかの環境問題について簡単な解説と問題提起を試
みたい。今回はその第一回目として「地球温暖化問
題」を取り上げる。                            
1.「地球温暖化」とは:                      
 (1)まず、グラフを見て頂きたい                
  これが産業革命後期以来 150年にわたる地球平均
  気温の推移である。リクツを並べる以前に温暖化
  が加速度的に進行していることが見て取れる。  
    IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の
  分析によれば、21世紀の 100年間現在の傾向が続
  くと、2100年には1990年比+5.8℃、対策を講
  じても+1.4℃上昇することになる。20世紀に
  温暖化が進んだと云っても 100年間で+0.6℃
  (日本は1℃)だから、この数字は既に手遅れ!
  かも知れないほど深刻なのである。            
 (2)平均気温だけではない。海温の上昇、氷河の後
  退、異常気象(豪雨・洪水・旱魃等)、海面上昇
  など、一部は既に現実の問題になりつつある。  
    その結果として、砂漠化、塩害、森林減少、森
  林火災、植生の変化、病虫害異常発生、新種伝染
  病の蔓延など、徐々に、しかし確実に進行する。
 (3)これらの現象が、人口爆発、経済成長・開発、
  南北格差、戦争など、人間社会の病理と結びつく
  結果を想像して、 100年後いや30年後の地球に危
  機感を抱くのは杞憂だろうか。                
2.原因:                                    
・産業革命以来、活発な産業活動と" 豊か" になっ
  た生活を反映し、Co2,メタン、フロン類など
  の温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度
  が高まり熱の吸収がふえた結果と云われている。
・勿論、科学の前提・予測に誤差・限界は避けられ
  ないが、極地の氷(の中の空気)や地層分析など
  で過去一万年位までの推計はかなり正確に可能だ
  し、将来についても気象学だけでなく、あらゆる
  先端科学の成果を世界中の第一線科学者が12年も
  かけた研究結果がIPCCの上記グラフである。
・もう少し細かく見ると、温室効果ガスの内訳は、
  N2 O6%、Co2 60%,メタン20%、フロ
  ン他14%;Co2 排出国別では米国22%、中
  国14%、ロシア7%、日本5%、インド4%、
  それぞれ2〜3%など;国民一人当たりでも、米
  国が5.6トン/年と突出している(日本は2.
  5トン/中国は0.7トン);産業別(日本)に
  は産業部門(工場など)40%、民生25%、運
  輸部門22%、その他  13%。それぞれの部門
  で抜本策が不可欠である。                    
3.対策:                                    
・自然界(動植物:生態系)は既に対応を始めてい
  る。人間が一番鈍感である。                  
・例えば、ヨーロッパの山岳植生はこの10年間で平
  均1M上昇、米国西岸の蝶の一種はメキシコ側で
  減少し、北で増加、日本でも(イネの北上は人工
  的品種改良の成果だが)自然界でも徐々に北上が
  進んでいると云う。桜の開花時期、梅の狂い咲き、
  昆虫の生活圏移動など身近にも小さな例は多い。
・人間の対策については、稿を改め、何回かに分け
  て論じたいが(京都議定書、拡大生産者責任、環
  境税、ダイオキシン、リサイクルの是非など、問
  題は無限にある)問題の重要性を示す例に一つだ
  け触れる。                                  
・京都議定書では温暖化を防ぐ方策として、先進国
  から排出される温室効果ガスの削減目標を定めた。
  具体的には2008/2012年までに1990
  年実績比EU諸国は8%、米国7%、日本6%を
  減らすことを約束したのだが(その後アメリカは
  ブッシュ大統領が" 経済に悪い" ことなどを理由
  に離脱してしまったことは有名である)、EU諸
  国では温暖化に本気で対応するためには数%どこ
  ろではなく長期的には60%もの削減が不可避と
  して、厳しい環境政策を採用始めた。          
    6%の削減でも大変なのに(日本の1999年実績
  は1990年+10%)、60%削減はハンパではな
  い。産業構造・ライフスタイル。更には前提とし
  ての価値観そのものの見直しが要請されるのであ
  る。                                        

生活者主権の会生活者通信2002年01月号/09頁