(議事録)
○長妻昭君 民主党の長妻昭でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題
となりました金融機能の再生のための緊急措置に関する法律の一部
を改正する法律案に対し、断固反対の立場から討論をいたします。
(拍手)
重病ではありますけれども、治る見込みのある患者さんに、痛み
を抑えるためだけにモルヒネを打つ、そして手術を先延ばしにする、
これでは、治る病気も治りません。これが今回の、整理回収機構、
RCCの強化策と言われる法改正の正体であります。(拍手)
不良債権処理という手術をこれ以上先延ばしすると、本当に日本
経済が死んでしまいます。一体いつまで、日本という国は不良債権
の処理を先延ばしし続けるのでしょうか。もう十年近くも、先延ば
しし続けております。国家的問題どころか、日本の不良債権問題は、
世界の経済不安の震源地、時限爆弾となってしまいました。
本法案のポイントは、RCCが金融機関から不良債権を買い取る
ときの価格を時価とするということにあります。
現行法の条文には、買い取る価格は不良債権が回収不能となる危
険性を勘案して適正に定められたものでなければならないとありま
す。つまり、現行法は、損を出さないように買い取り価格を設定し
なさい、こういうふうに決まっているわけであります。当然、RC
Cに損が出た場合は国民負担、つまり税金で穴埋めすることになり
ますから、今の現行法の条文は理にかなったものであります。とこ
ろが、政府は、本法案では、買い取り価格を時価とするという形に
変更するということであります。
本法案のねらいは明白です。RCCに金融機関の不良債権を高値
で買い取らせるというところにあります。高値で買ってくれるなら、
金融機関は、お荷物の不良債権を喜んでどんどん売るでしょう。
しかし、本法案のスキームでは、RCCは買い取った不良債権を
買い取り額ほど資金回収できず、損が出ます。そして、その損は最
終的には税金で穴埋めされるのです。
金融機関がお金を貸し出したものの、利息が支払われなかったり、
お金が返ってこないなどの不良債権に対して、国民の税金で、金融
機関の責任を問わないまま穴埋めしてあげる。何とも金融機関にと
って都合のよい法律ではありませんか。金融機関がこぞって賛成す
るのは当たり前です。
なぜ、法案提出者は過去の失敗に学ばないのでしょうか。今から
約三年前、金融健全化法に基づいて、主要銀行に約七兆円の公的資
金が投入されました。全然健全でないにもかかわらず、健全である
というフィクションに基づいて公的資金を投入したため、経営者の
責任は問われませんでした。公的資金を投入して不良債権問題は解
決すると、当時、胸を張っていた政府は、今の惨たんたる銀行の現
状を見て、どう弁解するのですか。
ここで学ぶべき教訓は、責任を問わないままの公的資金の投入は
絶対にうまくいかないということであります。効果が上がらず、最
終的に税金をどぶに捨てることになる。
金融危機を回避するために、銀行の経営者を総退陣させた上、過
去の甘い融資審査など責任追及をして、残すべき銀行に対してだけ
公的資金を注入するのなら、まだわかります。しかし、本法案のよ
うに、責任を問わないままの公的資金の裏口入学では、貴重な税金
がむだ金になってしまうのは、火を見るより明らかです。まさに天
下の悪法と断ぜざるを得ません。(拍手)
さらに、本法案では、RCCが不良債権一括売却、バルクセール
の入札にも参加できるとありますが、間違いなく、民業圧迫になり
ます。
現在、サービサーと言われる、不良債権を買い取る、RCCと同
じ業務を行う民間企業が、日本には五十社以上もあります。そこは、
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不良債権の企業をよみがえらせる豊富なノウハウを持っているプロ
集団も、多く存在するのです。
しかし、税金で補てんされるRCCと、価格競争で勝てるはずも
ありません。まさに民業圧迫にもなりますし、民間のプロの不良債
権再生ノウハウも生かされなくなるという、二重の意味で不幸です。
法案提出者からは、以下のような反論が聞こえてきそうです。現
行法のRCCでは余りに不良債権の購入価格が低過ぎて、金融機関
は余りRCCに不良債権を売らな
い、現行法では不良債権処理は進まないのじゃないか、こういう反
論が聞こえてきそうです。これは全く本末転倒の議論です。
現在、民間サービサーは、紛れもなく、時価で不良債権を買い取
っているはずですが、それでも、余り買い取りが進んでいないので
す。なぜか。銀行が提示してくる不良債権の売却希望額が時価を大
幅に上回るからなんです。それはなぜか。銀行が不良債権を厳格に
資産査定をして厳格な引き当てをしていないから、損を出さないた
めに、過大に時価より高い売却希望価格を出さざるを得ないのです。
決して、買い取り価格が低過ぎるから不良債権の売却が進まない
のではありません。RCCの買い取り価格の問題じゃないのです。
問題は、不良債権の売り手である銀行が売却希望額を高過ぎる設定
にせざるを得ない、ここに原因があるわけです。
ぜひ、本法案を否決して、不良債権処理に裏口から取り組むので
はなくて、王道で取り組むべきであります。(拍手)
まず、不良債権に対して厳格な資産査定をする、そして厳格な引
き当てをする、これを金融庁が徹底監視をする。そして、過少資本
行がふえて金融危機が発生しそうになった場合、一時、公的管理下
に銀行を置く。そして、資産を詳細に分析して、残すべき銀行と退
場させるべき銀行を選別する、そして、残すべき銀行は経営者を総
退陣させて、経営改革をさせる。ここで初めて、公的資金を再注入
した上で、公的管理を解いて民間に戻していく。これが王道の不良
債権処理であると考えます。
不良債権処理を先延ばししたこの十年、このような王道の不良債
権の抜本処理は、やろうと思えば、いつでもできたのです。政府の
先延ばしの責任は、万死に値します。
本日、先ほどの衆議院の財務金融委員会で、森金融庁長官の不当
な言動が問題になりました。
十月二十四日、銀行会館の八階で、森長官と銀行の定例意見交換
会がありました。その席で、森長官は、特別検査に関して二つの問
題発言をしております。一つは、特別検査の結果を中間決算に反映
するのかという点については、それは、そもそもできっこない話で
あり、やや期待を込めて言ったにすぎない、こんな発言をしている。
もう一つは、決して破綻懸念先に落とすことを目的にして特別検査
に入るわけではない、こういう発言もしている。
銀行幹部を前にした金融庁長官の発言とは、到底思えません。特
別検査も八百長だったことが明らかになったわけです。とんでもな
い話です。これほど重要な問題で、財務金融委員会では、森長官を
呼ばないまま、採決が強引になされました。
これまで、財務金融委員会では、良識ある自民党議員の皆さんが
大量欠席したり、法案提出者が委員会を遅刻したり、この良識ある
皆さんは、陰ながら、この悪法の成立を引き延ばす行動に出たのだ
と私は思いたい。そうでなければ、余りにたるんでいる。(拍手)
採決の際には、心ある与党の皆様には、こぞって席を立って、こ
の本会議場から退室いただくことをお願いいたします。
いいかげんに、ここまで来たら、責任先延ばしの政治と決別すべ
きです。このままでは、日本経済の破滅どころか、世界経済の破滅
を招きかねないのです。
これで、断固反対の討論を終わります。御清聴ありがとうござい
ました。(拍手)
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