生活者主権の会生活者通信2002年08月号/03頁..........作成:2002年08月10日/杉原健児

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「土壌汚染対策法」に対する「環境NGO
共同声明」及び衆参両院「付帯決議」について

埼玉県所沢市 河登一郎

1.土壌汚染の実態:高度経済成長のツケと環境対
 策の遅れの結果、現在日本各地で工場跡地や廃棄
 物処理場周辺土壌からの有毒化学物質・重金属汚
 染が問題になっています。健康被害、不動産取引
 上のトラブル、それらに伴う工事差し止めや損害
 賠償問題など深刻な事件も瀕発しています。風光
 明媚な別荘地も裏山に入ると、建築残土や廃棄物
 のごみ山が異様な景観を呈し、得体の知れない有
 毒物資が異臭を放ち、不気味な色の廃液が滲み出
 している、と云う実態が日本各地で起っています。
2.「土壌汚染対策法」:このような事態への対策
 として「土壌汚染対策法」が4月に衆議院、5月
 に参議院で可決され、5月29日に公布されまし
 た。半年以内に政・ 省令等で詳細を決め施行され
 ます。しかしこの法律を精査すると、従来の無法
 状態より一歩前進とは云え、多くの点で欠陥の多
 いザル法と云わざるを得ない内容です。    
3.環境NGO 共同声明:本法の問題点を6点に絞り
 要求として整理したのが下記共同声明です。  
 『土壌汚染対策法案に対する環境NGO共同声明
               2002年5月8日 
   取りまとめ団体:ダイオキシン・環境ホルモン
                 対策国民会議
 今通常国会に、環境関連法案のなかでも最重要法
 案といってよい「土壌汚染対策法案」が上程され、
 今月9日に、衆議院本会議を通過し、今月末には
 参議院環境委員会での審議が予定されています。
  この法案は、昨今、全国各地の工場跡地等で有
 害物質による土壌や地下水の深刻な汚染が、次々
 と発覚している現状に対して、汚染土壌対策を講
 ずることを目的としたものです。       
 しかし、肝腎の「汚染の未然防止の観点が盛り込
 まれていない」「汚染者負担の原則が貫かれてい
 ない」「汚染土壌の調査対象が限定的」「情報公
 開・住民参加が不十分」など、多くの面で不十分
 な内容と言わざるを得ません。        
   衆議院環境委員会では、野党4党が提出した修
 正案が否決され、法案は付帯決議を付けたかたち
 で原案通りに可決されました。付帯決議では「汚
 染の未然防止」や「住民からの申し出」、「見直
 し期間の短縮」などが要求されましたが、最も大
 切な「汚染者負担の原則」が盛り込まれておらず、
 さらに、この付帯決議には法的拘束力がありませ
 ん。これに対して、私たちは実効性のある法律の
 成立にむけて、以下の6項目を盛り込むことを求
 め、実現に向けて国会議員、マスコミ等各方面へ
 働きかけます。               
       ――要求6項目――       
 (1)本法案は事後対策法に過ぎず、土壌汚染防止法
 ではない。汚染の未然防止や汚染の拡大防止など
 の予防的視点を盛り込むべきである。     
 (2)土壌汚染調査と汚染除去等の措置を、原則とし
 て土地所有者でなく汚染原因者に義務づけるとと
 もに、その費用も負担させるように明記すべき。
 (3)調査の対象を工場・事業場に限定せず、廃棄物
 処分場等の土壌汚染のおそれがある全ての土地と
 し、廃止時のみならず土地改変時や操業中の工場
 ・事業場にも調査を義務づけるべきである。  
 (4)都道府県知事の調査・措置命令について、市町
 村長および住民の申し入れる権利を明記すべき。
 (5)調査結果や措置内容をすべて住民に公開するべ
 きである。                 
 (6)土壌汚染に関しては未解明な部分が多いため、
 早期見直しの必要があり、見直し期間は遅くとも
 3年とすべきである(法では10年固定!)。』
4.野党共同修正案:これら問題点の多くは識者や
 NGOがいろいろな角度から主張し、衆院では野
 党4党(民主・社民・自由・共産)の共同修正案
 も提出されましたが否決されました。     
5.衆参両院での付帯決議:しかしこの間「国民会
 議」を中心とする多くのNGO や個人(全国40以
 上の団体及び100名を超す個人:「生活者主権
 の会」も共同声明に参加しました)が共同声明を
 発表した効果もあり、政府原案での可決に際して
 衆院で14項目、参院で10項目にも及ぶ付帯決
 議が併せ可決されました。          
   付帯決議には上記共同声明の諸点に加え、  
 (1)土壌汚染の実態把握が急務                 
 (2)汚染土壌の適正処分につき「廃棄物処理法」の
 見直しを含めた早急な検討          
 (3)作業員や周辺住民の健康被害を来さぬよう有害
 化学物質・重金属類の大気への拡散防止(4)農
 薬による土壌汚染の実態解明と必要な措置、など
 の諸点も折込まれました。          
   「付帯決議」には直接の法的拘束力はありませ
 んが、国会から行政への「宿題」として今後行政
 施行の際配慮しなければならない、と云う政治的
 責任が生ずるものです。           
6.今後の課題:                             
   付帯決議に盛り込まれた諸点が今後の行政でい
 かに活かされるかの監視(関連政令・省令等への
 意見具申や要望活動など)、法の早期見直し、さ
 らには廃棄物処理法など関連法令の改訂運動等今
 後の課題はいくらでもあります。       

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