生活者主権の会生活者通信2002年10月号/06頁..........作成:2002年09月28日/杉原健児

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新経団連会長・奥田碩氏への手紙

神奈川県 平岡昭三

 前略                    
     新経団連の在り方について      
(一)新聞報道によれば、貴方は新会長としての新
 方針を近々発表され由、承っております。貴方の
 考え方は、この国の財界ひいては全産業への影響
 において、極めて大なるものがあります。私は、
 74才の、あとは死ぬ丈の一市民に過ぎませんが、
 多くの市民の気持ちを、勝手に肘度して、以下一
 言参考意見を、申し上げたいと存じます。   
                       
(二)経団連は、長年、財界のリーダーとして、政
 界にたいしては、自民党寄りの姿勢で参りました。
 今、自民党を中心とする与党は、小泉内閣を擁し、
 小泉内閣は、構造改革に腐心中であります。之ま
 での処、この改革は、貴方も評される通り、大変
 厳しいものであります。そして貴方は、今後に期
 待するとされております。しかし乍ら、本改革を
 つらつら惟んみるに、之は、本質的に体制内改革
 の域を出ず、成功はあり得ないと思います。  
   釈迦に説法でありますが、自民党は、長年の、
 過度の中央集権制に基づく、一極集中制の既得権
 のぬるま湯に浸かり、政官業の癒着、集金集票制
 の悪癖から脱却することが出来ません。今の世の
 中の諸悪は、全てこのシステムから来ております。
 このシステムが、特別会計と財投を厖大化させ、
 国と地方で一千兆円の大借金を齎らし、財政をパ
 ンク寸前に追込んでいる丈でなく、肝心の経済の
 大半を官制硬直経済化し、経済活性化の道を、塞
 いでしまっているのであります。(この間の状況
 に、最も詳しいのは、民主党議員石井紘基氏の 
 「日本が自滅する日、PHP 研」であり、他に類を
 見ません。)このように、この国の政治・経済シ
 ステムは、自民党とその族議員によって、本来、
 内閣によってのみ行われるべき行政に対し、闇の
 行政とも言うべき、二重構造の行政になっている
 のであります。               
   従いまして、この体制ある限り、改革は不可能
 であり、この体制を解消することは、自民党の自
 殺行為でありますから、之も亦実現不可能であり
 ます。                   
                       
(三)更に酷いことは、この政治の二重構造によっ
 て、経済についても二重構造が齎らされているの
 であります。即ち、日本経済は、グローバルに競
 争し生産性の極めて高い輸出関連製造業と、規制
 と補助金に守られた生産性の低い製造業、建設業、
 農業、サービス業等の二つのセクターに分れて来
 ているのであります。            
   従いまして、この国の経済再生の核心は、決し
 て不良債権問題ではなく、この低生産性産業の思
 い切った活性化であり之こそ急務なのであります。
 現代の長期不況は、上記政治経済の二重構造によ
 って惹起しており、このシステムを根本から大改
 革大手術せぬ限り、大病根治の方法はありません。
 (之らの関係について、文芸春秋本年4月号の榊
 原英資慶大教授の「小泉骨太改革は破産した」に
 詳しい処であります。)           


                       
(四)以上がこの国の政治経済の偽らざる実態であ
 ります。後藤田正晴元副総理ですら、「改革の営
 みは、賽の河原である。最早や、政権交代が必要
 だ。と言い切っております。ということになりま
 すと、新経団連の生きる道は、一つには、政治の
 二重構造を断ち切るため、自民党に政権交代を促
 すと共に、之に代るべき野党第一党たる民主党を
 育成、支援することであります。同時に経済の二
 重構造を断ち切るため、産業界、財界に対し、低
 生産性産業の活性化を促すべきであります。  こ
 のため、民主党及び之と強調する政党に対しては、
 この活性化に繋がる政策の構築を迫るべきであり
 ます。

(五)幸い、民主党は、次の政権に向かって、新政
 策として、シビルミニマムの他に規制撤廃による
 経済の活性化、そのための地域の自立と道州制の
 実現を標榜しつつあるやに見受けられます。従い
 まして、貴会も、勇気を持って、政策の大転換を
 図るべきであります。要するに、この国は、補助
 金と時間の浪費によるソフトランディングではな
 く、中央集権から分権の理想形である道州制への
 大転換と規制撤廃によるハードランディング以外
 には道はなく、その為には、産業界は一丸となっ
 て、中央集権体制から道州制への大転換を容認し、
 支援すべきであります。           
   道州制への移行が実現すれば、中央集権はなく
 なり、中央官庁も殆どなくなり、中央官僚も道州
 へ散り、中央には居なくなります。政治の大半は、
 道州という地域国家で行われます。そうなると経
 済も地域毎に自由化され、景気もよくなり、GDP 
 のパイも大きくなります。そうなると福祉もシビ
 ルミマムも新雇用も可能となって参ります。  
                       
(六)今や世界は新世紀に当り、大きな歴史的転換
 期に当っております。新経団連のトップは、この
 大きな流れを見誤ることなく経済界をリードすべ
 きであります。諸外国の例を見るまでもなく二大
 政党による政権交代のシステムは当然の姿であり
 ます。又、米国、ロシア、韓国その他の東南ア諸
 国も全て、経済再生を成功させたのは、皆ハード
 ランディング方式の採用によってであります。わ
 が国の不良債権も、ハードランディングしておけ
 ば、とっくに解決していた筈であります。しかし
 乍ら、自民党では、本質的体質により、ハードラ
 ンディングは、できないのであります。    
   日本人は急激な変革を嫌うと言われていますが、
 切刃詰ったら、明治でも、敗戦時でも、勇敢に立
 ち向う能力は実証済みであります。三井住友も合
 併銀行を作ったではありませんか。輸出関連企業
 も、思い切った生産性向上策を採ったではありま
 せんか。どうか勇気を持って業界を指導して下さ
 い。貴方は並みの男じゃありません。     
   貴方にしか出来ない大転換です。全産業も全労
 働者もそれを期待しております。企業献金も止め
 るべきです。この位しないと経団連の再生もない
 でしょう。以上が日本再生の唯一無二の王道です。
 終りに、津本陽のベストセラー「勇のこと。講談
 社文庫」をお薦めします。乱文乱筆を深謝し、益
 々のご健闘を祈念申し上げます。    草々。

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