昭和天皇独白録に太平洋戦争の遠因として米国で
の排日移民法案が上げられているが、これは192
4年に、米国の上下両院で可決された法案で、当時
この屈辱に耐えがたいと、米国大使館前で割腹自殺
をはかろうとするものや対米開戦を唱えるものすら
あった。徳富蘇峰などは、日本が今後敵として戦わ
ねばならないのは、ボリシェヴィズムより、むしろ
世界にはびこるアメリカニズムだ。大和民族よ目覚
めよと論陣を張っていた。
排日移民法成立当時、対米輸出は日本の輸出の
40%あり、日本が生産する生糸の90%は米国が
買い上げていた。よって無益な反米感情に走るより
は、もっとクールに実益をあげたほうが得策であっ
たことはいうまでもない。然るにその後の日本の歴
史は太平洋戦争という悲劇的な結末へと、戦争戦略
もないまま転がり込んでゆくわけであるが、日本の
国益というものをもっと冷徹に考えることこそ肝要
であったと思うと同時に、これが外交のあるべき姿、
つまり現実主義外交というものではないか。
国連中心主義というと聞こえが良いが、常任理事
国のフランスが今回のイラク攻撃でとった利己的な
態度は、まさに外交というものの本性を見せ付けて
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いる。
フランスはイラクへの武器売却の見返りとして石
油開発利権を獲得し、サダムフセイン政権と経済的
に密着していたこと、よって米国の軍事介入はフラ
ンスの国益を著しく損なうこと、予想されるイラク
暫定政権の指導者に戦後における開発利権の維持継
続を申し出て拒否された事実があること、米軍がバ
クダッドに近づくなり、今回の戦争を肯定する発言
に急に変化し、戦後復興は国連中心で行うよう提案
しているが、フランスの本音が丸見えだ。こういう
国が常任理事国になっているという現実を我々は目
の当たりにしてきたわけだ。
そしてロシアや中国も同じ穴の狢でまさに国連は
国家の欲望むき出しの会議場なのだ。これが外交と
いうものの冷たい現実だと思う。
最後に、米国は、自由と民主主義革命の輸出国で
あることを忘れてはならない、フランス革命は、ア
メリカの独立戦争が遠因であり、第一次世界大戦で
は、ドイツ/ オーストリアの君主制国家を打ち破り、
第2次大戦では軍事独裁国家を解放し、その後の冷
戦において共産主義国家を打倒してきたという戦い
の歴史を忘れてはならないと思う。
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