地方分権改革推進会議が6月に提出予定の、税源
移譲を増税と抱き合わせにして先送りにするという
改革試案を見て、既得権益に対抗して分権改革を実
現しなければならないという志の希薄さにはあきれ
るばかりです。しかし、幸いにもその試案を見て地
方の怒りが爆発し、本気で地方が立ち上がって来そ
うな気配が出てきました。
むしろ同会議が顔色を窺っている財務省や総務省
の方が世論の動向を敏感にキャッチして、先ずタバ
コ税等からの税源移譲を具体的に実施しようかとい
う気運が出てきて、同会議の存在感の無さがますま
す浮き彫りになってきました。
一方で第27次地方制度調査会はこれも6月に提
出する予定の中間報告を決定しましたが、ここでは
県の合併や道州制移行への検討を進めるべきだとい
うところまで言及しており、その着実性と志の高さ
は絶賛に価すべきものと思います。
そういう国民にとって役に立ったり立たなかった
りの諮問会議の動きとは別に「住民自治」の動きは
着実に高まっています。
一つは、新聞・テレビでも一部報道されている志
木市の行政パートナー制度がいよいよ実施に移され
ることになり、その説明会が5月25日に開催され
るとのことで、今回それに参加してみました。
70名程の参加見込みで設営された会場にその二
倍以上の人が押し掛けたため、会場の段取りに時間
がかかり、開会が可成り遅れてしまった程でした。
そもそも志木市の狙いは財政先細りの中で、住民
サービスはできるだけ維持しながら歳出の大半を占
める職員人件費の圧縮を、解雇できない(法律で身
分保障されている)職員の自然退職減と新規採用の
停止で実施し、その穴を行政パートナーと称する市
民公益活動団体が市との協働という形で埋めていこ
うというものです。
動機は先々の財政難にあるとしても、時代の大き
な流れである市民との協働、「住民自治」という形
で、しかも思い切った方策を打ち出した点は大いに
評価できます。
具体的には、市は行政パートナー(団体に限る、
個人は対象外)とパートナーシップ協定を締結して
業務を委託し、業務参加者1時間当たり700円相
当の委託料を支払うというものです。
このやり方で、現在1,650ある業務のうち8
50が協働業務として移行可能で、500人の職員
を50人に減らすことができるとしています。
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これから約20年かけて順次そこまで持っていこ
うというもので、今回はその第一次募集として施設
管理的4業務について説明がありました。
この仕組みは行政と協働で市民が行政サービス業
務そのものをやろうというものですが、市民からの
質問を聞くと市民側が従来からの、行政サービスは
基本的に行政府がやるものだという感覚から脱皮し
きれておらず、市に時給700円で雇用されるとい
う感覚からなかなか抜けきれないようで、労基法と
の関係や労災・雇用保険の事などをしつこく聞く人
がいました。
今回の説明会で感じたことは、先進的行政側の
「住民自治」への動きに対し、まだまだ住民側に意
識の変革が遅れている人が居ることで、このような
「住民自治」への動きを一つ一つ実績として積み重
ねることで、市民意識を早く改革しなければならな
いということです。
もう一つは、5月31日に早稲田大学で開催され
た『沸き上がる「住民自治」その原点とプロセスデ
ザイン』というシンポジウムで、それにも参加して
みました。
鷲澤長野市長、逢坂ニセコ町長、山崎総務省行政
体制整備室長、他学識者6名をパネラーにしたシン
ポジウムで、学生による「住民自治」に関する熱心
な研究発表もありました。
このシンポジウムパネラー全員の見解は、地方は
その地方に応じた多様性を持つべきで、画一的な方
向を押しつけることは好ましくないということと、
志木市が指向しているような行政サービス業務の住
民への移管・委任は今後の進むべき方向だというこ
とでした。
また、総務省の山崎室長からは市町村合併や「住
民自治」で基礎自治体に力がついてくれば、県の機
能の見直しが当然必要になり、県の合併や道州制の
議論に発展していくことになるだろう、平成5年か
ら始まっている分権改革は、補完性の原理を基本に
国の形を変えるという大分権改革の時代に入ってい
る、という嬉しい話もありました。
いずれにせよ、住民の住民による住民のための
「住民自治」が今後の地方自治の基本であり、これ
を早くしっかり確立・定着させることで、真の地方
分権大改革を世論として国にせまっていく必要があ
ると感じました。
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