北朝鮮に関しての情報はTVや新聞、雑誌といった
メディアから入ってくるのが一般的である。しかし、
それでは一方的な情報源であるため、ここでは、北
朝鮮の国家体質を如実に表す憲法について説明する。
これは、第二次大戦後に制定され、その後3 回改正
されており、最後の改正は金正日体制になった94年
以降に、1998.9.5最高人民会議第10期第1 次会議で
修正・補充されたものである。
全文は166 条あるので全てを紹介することはでき
ないが、印象に残った部分をかいつまんで紹介する。
「」内を憲法原文として書いてある。
○まず、序文。
「朝鮮民主主義人民共和国は、偉大な領袖金日成
同志の思想と領導を具現したチュチェの社会主義
祖国である。」
といきなり体制維持を掲げた文章が出てくる。こ
れは92年の憲法にはなかったもので、金正日体制
後に現体制維持を目的に追加したものである。
○主権に対しては以下にあるように、一見、人民に
あるような書き方だが、実際は人民会議が全てを
掌握している。
「第4条 朝鮮民主主義人民共和国の主権は、労
働者、農民、勤労インテリ及びすべての勤労人民
にある。勤労人民は、自らの代表機関である最高
人民会議 及び地方各級人民会議を通じて主権を
行使する。」
○そして、その最高人民会議の位置づけだが、次に
あるように実は憲法の上にある。そしてその上が
金正日である。憲法の改正、解釈は簡単に変更で
きるという条項である。
「第91条 最高人民会議は、次の権限を有する。
1.憲法を修正、補充する。(92年の憲法より補
充するの文言が増えた。) 」
○また、次にあるように常任委員会の権限で国際条
約を破棄することが簡単にできる。
注目することは、金正日体制の前はその権限が国
家主席にあったのだが、新憲法では、常任委員会
に委譲された。( 金正日の能力では国家を掌握す
ることができないと当時のマスメディアは報じて
いたが、この権限の委譲により体制維持に努めた
のであろう。)
「第 110条 最高人民会議常任委員会は、次の任
務及び権限を有する。(92 年の憲法では、朝鮮民
主主義人民共和国主席の任務及び権限となってい
た。)
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4. 憲法及び現行の部門法、規定を解釈する。
14. 外国と締結した条約を批准又は廃棄する。」
○また、次のように人民の保護を目的とした条項も
あるが、守られていないのは周知のことである。
「第25条 朝鮮民主主義人民共和国は、人民の物
質文化生活を絶えず高めることを、その活動の最
高原則とする。税金がなくなったわが国で絶えず
増大する社会の物質的富は、全的に勤労者の福利
増進に回される。国家は、すべての勤労者に、食
べて着て住むこと のできるあらゆる条件を保障
する。」
「第31条 朝鮮民主主義人民共和国において、公
民が労働する年齢は16歳からである。国家は、労
働する年齢に達していない少年の労働 を禁止す
る。」
○軍事に関する条項は憲法上特に重要なのだが、い
たる所にちりばめられている。あえて揚げれば以
下の条項となる。
「第85条 公民は、常に革命的警戒心を高め、国
家の安全のために身を捧げて戦わなければならな
い。」
「第86条 祖国防衛は、公民の最大の義務であり、
栄誉である。公民は、祖国を防衛しなければなら
ず、法の定めるところに従い、軍隊に服務しなけ
ればならない。(92 年の憲法には「祖国及び人民
に背反することは、最大の罪悪であり、祖国及び
人民に背反する者は、法に従って厳重に処罰する。」
という規定があったが新憲法は削除されている。
祖国そのものが人民に背反している現体制のパラ
ドクスに気づいて削除したのだろうか。) 」
北朝鮮の憲法を読んでいるうちに何やら背筋が寒
くなってきた。いや、そんな表現ではすまされない。
子供のころ親の大事なものをなくして、怒られるの
がいやで夜ふらふらとし神社の境内で泊まろうか、
と決めた時のような恐怖である。実は以上の条項以
外にも、言葉に出すことも出来ないような条項がい
たる所にあるのだ。読んでいて余りにも悲しくなっ
てしまうのであえてこれ以上は踏み込まない。現物
の憲法全文を読めばその恐ろしさを目の当たりにす
るだろう。メディアは、北朝鮮と言えば核や拉致の
ことしか言わないし、また、その反対に北朝鮮と仲
良くしようと言っている知識人の話を揚げる。
しかし、この憲法を読めば核や拉致は当たり前で、
仲良くなるなんて考えられない国だということが分
かる。国民の皆さんも目を覚ましてほしい。
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