太平洋戦争に至った日本の構造的問題として、国
家体制の中空構造問題が挙げられると思う。
これは内閣の方針や決定が、軍部の独走により全
く守られていなかったことが挙げられる。典型的な
例が満州事変で、これは関東軍という帝国陸軍の出
先機関の暴走により発生したもので、東京の陸軍中
枢部ですら知らない事件であった。この事件後、昭
和天皇は責任者の処分を命じたが、曖昧な処分に終
わり、その件を田中義一首相(元陸軍大将)が天皇
から叱責され、内閣総辞職に至ったという実に情け
ない結末ともなっている。
米国のルーズベルト大統領も、日本の場合、政府
決定と言えども、必ず陸軍参謀本部や現場司令官の
暴走で決定が覆る以上、日本との外交交渉は無意味
であるという見解から、対日戦やむなしの結論に至
った経緯がある。
この中央のコントロールが利かない状態、つまり
中空の政治構造は現代の小泉政権でも各所に垣間見
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ることができる。例えば高速道路建設の効率化を目
指すことになっている道路公団民営化だが族議員、
官僚、業界が三位一体となって不採算路線を公団で
はなく、建設省管轄の道路特定財源で建設してゆく
という、高速道路行政の効率化に反する結果に結び
ついている。
つまり太平洋戦争の根本原因にもなっている、国
益を考えるという視点の欠如でもある。
私は、国民的人気が高かったが、帝国陸軍の傀儡
政権とも言える近衛政権と政官財の癒着を温存させ、
実態としてその傀儡政権となってしまっている小泉
政権の歴史的な類似性に大変興味を懐いている。
小泉政権が存続した場合、税金垂れ流しの構造は
変わることなく、日本の財政赤字は拡大の一途を辿
ることになることは間違いない、丁度近衛政権時代
に軍事予算に歯止めをかけるどころか、拡大の一途
であったのと同じように。
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