生活者主権の会生活者通信2003年10月号/07頁..........作成:2003年09月24日/杉原健児

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私の薦めるこの1冊「大江戸リサイクル事情」
(石川英輔著講談社文庫)

埼玉県所沢市 河登一郎

  著者は武蔵野美術大の講師。江戸時代の庶民の生
活に滅法詳しい。姉妹作の「大江戸エネルギー事情」
「大江戸テクノロジー事情」と合わせて3部作だが、
内容的には共通したテーマである。       
・江戸時代 300年弱を通じて、人口は30百万人弱
 でほぼ一定。資源としては鎖国だったこともあり、
 「衣・食・住」いずれも日本国内で取れる植物を
 中心に、森と川と海の恵みに限られていた。それ
 らはいずれも今年か数年前の太陽の恵みである。
・従って徹底的なリサイクルが国民生活の隅々にま
 で完全に浸透していたことを豊富な実例で分り易
 く説明している。現在の日本が世界中から毎年5 
 億トンもの食糧や鉱・工業原料を輸入して国中を
 廃棄物の捨て場にしている現状とはまさに両極端
 である。                  
・例を挙げればきりがないので、1 例だけ引用する
 と、イネ。その実(コメ)が主食と酒、は云うま
 でもないが、藁は蓑・笠・わらじ・縄・畳・ござ
 ・俵・壁土の芯と生活のあらゆる面で利用され、
 更に牛馬の飼料・最後は肥料・燃しては灰(これ
 はまた肥料や上薬の原料など)と徹底的に利用さ
 れた。コメや藁を食べた人間や動物の糞尿も肥料
 として再び野菜に姿を変えた。ほぼ完全な再利用。
 無駄は全くなし。              
・重要な事は、これらの利用はいずれも太陽の恵み
 により成長し・増加した範囲で動植物の一部を利
 用したに過ぎないから自然の恵みの中で永遠に持
 続可能な・しかも高度の文明を伴った社会が 300
 年にわたって続いた恐らく世界でもまれな例であ
 る。                    
・現代の我々がそのまま実行する事は困難だが今後
 の地球人類の生きざまにとって大きな示唆を与え
 る、世界に誇るべき日本の遺産である。日本発の
 環境文明として世界に発信したい。      

究極の動物保護

千葉県柏市 峯木 貴(mineki@taurus.bekkoame.ne.jp)

 あなたの近所の方でも、家族でも、親戚でもペッ
トを非常に愛している方はいるはずである。また、
非常に愛するあまり家族の食事は忘れてもペットの
エサは忘れないという人もいるだろうし、他人の子
供が川でおぼれても助けないが、自分のペットは助
けるという人もいるだろう。もっと極端に、身内が
亡くなっても悲しまないが、隣の犬が死んだら悲し
むという人も少なからずいるに違いない....   
 かつて、人間のこのような偏った慈愛を逆手にと
って悪事を働いた集団があった。それはドイツのナ
チスである。あまり知られていないようだが、ナチ
スの教えのひとつに人間と動物の扱いの異常さがあ
る。それは、人間と動物を分け隔てなく扱い、ただ
能力や有用さといった極限られた面で階級立てると
いうことである。つまり有能な犬は精神異常者やユ
ダヤ人より格が上であると。          
 このようなナチスの考え方は幹部に多くいて、例
えばヒトラーは「私は人が死んでも悲しまないが、
動物が死んだら悲しむ。」 と常々いっており、ヒ
ムラーは「私は人間を愛している。動物を愛するよ
うに。」と発言している。           
 そして、このナチスの政策は「動物保護法」に集
約された。                  
 この法律は、動物保護に関して凄まじいほどの内
容が規定されている。つまり、動物に苦痛を与えて
はいけないということに換言できるのだが、かなり
曲解され自分のペットをしつけようとして痛みを与
えても逮捕されるし、ミミズを解剖しようとしても
内部告発されるといったものであった。     
 一方、動物保護法には人間に関する条項もあり、
動物とほぼ同様の扱いとなっている。      
  ミミズを殺すと罪になるが、ユダヤ人を殺しても
罪にならなかったのである。          
 このような政策はなにもナチスの幹部だけの教条
であるわけではない。当時のドイツ国民は熱狂的に
支持したのである。インフレや失業で国民の不満の
捌け口がそのような動物保護といったことに昇華し
たのであろう。それをナチスは悪用したわけである。
 今の日本でこのようなことは起こり得ないと言え
るだろうか。昨今のニュース記事を見ると、人間と
猫を分け隔てなくビルから落として殺すというよう
な、人を人と思わないような事件が起きている。逆
に動物の保護に関しては異常と思えるほどの盛り上
がりぶりである。日本もかつてのドイツと同じよう
に、国民の社会や経済への不満が高まっている。ド
イツと違うのは単にインフレとデフレの違いと言え
るのだろうか。                
 あなたの周りをもう一度見てもらいたい。人間よ
りも動物の方が大事だと思っている人がいないかど
うかを。                   

生活者主権の会生活者通信2003年10月号/07頁