1.志木市の実験:
・生活者通信2004年1月号で板橋さんが志木市の行
財政改革に関して素晴らしい報告をされた。
・多くの自治体が中央依存の非効率な行政を続けて
いる中で、志木市長穂坂氏が推進中の改革は括目
に値する。行政改革の原点のような魅力的な構想
が数多く採用され、(「行政パートナー」:行政
実務のNPO委託、「市民委員会」:公募市民に
よる調査・研究・提言、「第三者機関」:行政と
市民協力による評価・監視組織など)実行に移さ
れている!
・ただ、あまりにも思い切った構想だけに、否定的
な意見もある。既得権益にあぐらをかいてきた人
々(行政自身・市議会議員や労働組合の一部・癒
着業者など)の拒否反応は当然予想されるとして
も、真面目な改革派の中にも、行政実務を素人の
市民がボランテイア・ベースや時給700 円でやる
と、コストダウン効果はすぐ見えるにしても、プ
ライバシー保護、行政の専門性や公共性の維持な
どの面で問題が残るのではないか、と云う懸念で
ある。
しかし、行政の裏まで知り尽くした穂坂市長の
明快な方針と市民の協力により、これら諸点にも
配慮されており、予想以上に順調に進捗している
ようである。
・どんな改革にも問題は伴うが、方向は正しいのだ
から、問題点をあげつらうのではなく、前向きに
試行錯誤を続けて頂きたい、と思っている。
2.凡庸な自治体では:
・最近このように、改革に意欲的な首長があちこち
で誕生している。志木市や長野県は有名なケース
だが他にも面白い実験をしておられる自治体がふ
えて来てはいる。しかし、全体から見ればほんの
一握りの例外でしかない。
・長野県や志木市のように卓越した首長のいない、
凡庸な自治体は救えないのか。
3.地方自治法244 条の改正:
・もっと広範囲な影響ををもたらす制度として、最
近私が注目しているのが、昨平成15年6 月の地方
自治法244 条の2改正に伴う、「公施設運営の指
定管理者制度」(民営化)である。
・改正前の地方自治法では、自治体公営の諸施設の
運営は自治体職員または公法人職員が当たらなけ
ればならないことになっていたのだが、改正後は
一括して民間委託して良いことになった。その背
景には、どうにもならなくなった財政危機がある。
国も自治体も大赤字・大借金で、交付金・補助金
も今後ジリ貧・激減が予想される中で、金食い虫
だった上記のような公施設の運営を、この改正に
より民間委託する方向に一斉に走り出したのであ
る。今後、全国で大きなうねりになる予感がする。
・既に多くの自治体で、「指定管理者制度」に関す
る条例を策定し、公営の地域センター、図書館、
保育園、体育館、斎場、美術館、公民館などの運
営を指定管理者という形で民間委託する方法が始
まっている。一定のガイドラインの下で運営につ
いては受託団体(企業でも、NPO 法人でも、法人
|
資格のないNPOでも可能)が自主的に行って良
い。通常、自治体が一定の委託料を支払うことに
なる。(それでも、従来の官営に比べればコスト
の大幅ダウンが期待される)。
・その効果として期待されることは(1)大幅なコ
ストダウン、(2)サービスの向上(私は「コス
ト半減;サービス倍増」の可能性を秘めていると
思っている)及び(3)NPO 活動の場と主婦や中
高年層の雇用拡大である。
4.懸念される点もいくつかある。
(1)受託先選定が公平に行われ、公正な競争のメ
カニズムが働くか否か:
・所沢市の実例で云えば、選定手続きは@まず行政
事務局が一定の基準で候補を絞りこみ、A市長が
決定し、B議会が承認する。C入札は行わない。
当然想像されることは、行政・特に首長と特別な
関係にある団体が受託者になるケースであり、期
待されたメリットが生まれず、逆に行政・特に首
長の権限が強化されること・形を変えた癒着が生
ずる可能性である。官営の弊害を除くための民営
化が民営化先選定の段階(ここまでは官の分野だ
から)で歪められる可能性は小さくない。
・この弊害への対策は、@情報公開:説明するまで
もない。指定委託制度を決める条例の中に明文で
織り込むことである。A一定の資格要件を前提と
した入札、B住民参加:選定・評価・監査に際し
ては、志木市のような公募市民を中心とした組織
を活用するなど行政だけの恣意を極力排除する工
夫が不可欠である。
(2)「安かろう・悪かろう」の弊害:
・コストダウンの面だけが強調されると、「安かろ
う・悪かろう」の弊害も充分考えられ、行政サー
ビスが公共性の維持やプライバシー保護を含め逆
に低下する可能性も否定できない。現にいくつか
の自治体で、住民同志が2 派に分かれた紛争が始
まっているケースもある。
・かかる事態を避けるためにも、情報公開と住民参
加が不可欠である。
(3)かくして節約された財源の使途である。
・ややもすると、浮いた財源が別のハコモノや開発
に向けられる恐れがある。財政難を理由に削減方
向にある福祉・環境・教育或いは減税に充当しな
ければ意味がない。ここでも住民の監視が不可欠
である。
5.以上の如く、この制度は運用のよろしきを得れ
ば凡庸な首長の下でも自治体財政改善・行政改革
の救世主になる可能性を秘めてはいるが、両刃の
刃でもある。住民の問題意識の高さが問われる。
皆さんもそれぞれお住まいの自治体での動きを
チェックされ、NPOとして前向きに取り組まれ
ること及びそれと併せて上記問題点を厳しい目で
評価・監査することをお勧めしたい。
私は、当会の活動として、「首相公選制」「道
州制」や「憲法問題」など、大上段に振りかざし
た大テーマを追いかけることもさる事ながら、こ
ういった身近で具体的なテーマへの取り組みも極
めて重要だと思っている。
|