「お父さんは、僕のことを洗脳しているの?」
なんて一著前のことを言うから、日頃考えているこ
とを中学生の子供でも分かりやすいように説明した。
「この世の中に国があって、法律があって、軍隊
があって、警察があるのはなぜだ?こんなものなけ
れば人間は自由に生きられるはずだけど。」
この問いに、
「反対に自由になれないから。」
と、解ったような、解らないような返事が返った。
以下は、私の説明である。
もう数百年も前にアナーキズムといって政府は一
切いらないという思想があった。しかし、このよう
な「自由になりたい」という考えはいつの時代にも
ある。このような無政府状態で、もし誰かが強盗を
して数百万円を手にしたらどうなるか?悪いことと
は知りながら、その報酬を皆うらやましがるだろう。
悪いことをしても警察がないからつかまらず、やり
得だからである。法律がないから罪にもならないの
だ。
現実の社会はただでさえ厳しい法治国家なのに未
だに殺人や強盗はなくならない。これがまったく自
由な無政府国家であれば、殺人や強盗がなくなり幸
せな社会になれるはずがない。こんな世界では人々
は自由ではあるが、常に怯えていなければならない。
強くてお金があるものは施設警察を作るだろう。場
合によっては海賊や山賊を雇って略奪をするかもし
れない。罪にはならないのである。そして弱い人間
は常に略奪の対象となる。
こんなアナーキーな時代もかつてあった。政府と
いうものが存在する以前の原始社会である。そこで
は強い人間が全てを支配していた。弱い人間は搾取
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されるだけだ。そのような時代は長い年月を経て、
やっと国家が出来上がり、法律、警察、軍隊が出来
上がって治安が回復した。しかし、どんな時代でも
「(極端な)自由」が欲しい、という人間はいるもの
である。その最たるものはテロリストである。彼ら
にとって国は邪魔な存在であり、また法律もそうで
ある。常に警察と敵対している。
ここまで話すと少しは納得したようだが、最後に
もっと重要なことを話さなければならなかった。も
し、友達同士が集まり、そこに教師や親という大人
が入らなかったらどうなるか。彼らはその中で一番
強いものに引っ張られ結局は「自由」を選ぶだろう。
その自由とは国や法律からの自由であり、誰にも干
渉されない自由である。法律や警察は彼らにとって
も非常にわずらわしいものなのである。しかし今説
明したように、その「自由」と引き換えに弱肉強食
の世界になっていく。弱いものは常に強いものの犠
牲になる、と教えてくれる人がいないからである。
このような特殊な集まりはエスカレートすると、強
者は弱者に対して命令するようになる。略奪するよ
うに、と。これはまさにテロリストである。
教師や親、また、国はこのような極めて「自由」
な世界を避けるために、人々を洗脳しなければなら
ない。それは一般的には「教育」という。もし、洗
脳する人がいなければ時代は逆戻りしてしまうのだ。
また、洗脳する人がいなくて極めて自由な世界は、
「狼に育てられた少女」と同じように本能で生きる
しかない。
ここまで言うとやっと分かったようだ。
「つまり、普通にしろ、ということを言いたいの
?」と。「その通り。」
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