生活者主権の会生活者通信2004年05月号/04頁..........作成:2004年04月28日/杉原健児

全面拡大表示

「日本再生」への道

文京区 松井孝司

 現代社会の最大の問題は、社会が目指すべき方向
が多極化し、混迷を深めていることではないだろう
か?混迷の原因は「真の正義」が判らないからであ
る。                     
 思想、信条、価値観が異なれば、正義の内容は異
なり、思想、信条、価値観の数だけ「正義」が存在
する。社会にとっての「正義」は存在しないという
意見さえある。                
 ユダヤ教、キリスト教とイスラム教は同根で教義
のパターンに共通性があるのに、お互いを敵視して
聖戦の論理を生み、異教徒間の争いを際限の無いも
のにしている。多様化、混乱している正義の内容を
統一出来なければ争いに終止符は打てない。   
 一つの国の正義は一つに集約する必要があり、ど
うしても正義の内容を集約出来ない場合は、国家を
分割し、異なる法体系ごとに国家を編成する以外に
正義を実行する方法は無い。連邦国家の創設は、集
約が難しい多様な価値観を共存させながら、国家を
統合するための具体的方策の一つとみてよいだろう。
 世界の恒久平和の実現には、国境を撤廃して土地
への執着を断ち、多様な法制度の選択を可能にする
世界連邦の構築が望まれるが、自己中心的な宗教的
信条やイデオロギーを排除しなければ実現は難しい。
 わが国の現状を見ると、国内は勿論、信条を等し
くする筈の政党内でも異なるイデオロギーや価値観
を持つ集団が存在し、正義の内容がばらばらだ。こ
れではまともな政治はできる筈がないし、仮に政権
交代が行われても混迷は続き、重要問題の解決は先
送りされるだろう。国内で政権を目指す「政党」は、
党内で徹底的な議論を重ね、国民に選択を迫るべき
「正義」の原則を一つに集約すべきである。   
 明治維新により、士農工商の身分差別は天皇主権
と四民平等の価値観に姿を変えたが、第二次大戦後
は国民主権に基づく民主制の諸制度が、現代日本の
「正義」の内容を構成している。        
 「自由」と「平等」は民主制における「正義」の
2大原則である。しかし、「自由」を尊重するため
には規制が少ない「小さな政府」を必要とし、「平
等」を実現するためには規制が多い「大きな政府」
が求められる。                
 日本は伝統的に「自由」より「平等」を重視する
人々によって支配され、さまざまの規制によって貧
富の格差を少なくし、税制により所得を再配分して
きた。                    
 「平等」を実現するためには、政府と公的セクタ
ーの肥大化が避けられず、日本のGDPの6割が公
的資金による非効率な官製事業で占められ、日本は
世界でも稀な資本主義の顔をした「社会主義」国家
になってしまった。              
 「社会主義」国家では、貧富の格差を是正する代
償として、個人の自立は抑制され、自立できない弱
者の集団を生みやすい。「受益」と「負担」、「権
利」と「義務」の乖離が大きくなり、受益者の「権
利」が幅を利かせ、負担の「義務」を課すことを難
しくする。公益の名を借りた私益が横行し、権力者
の腐敗と官僚の専横が蔓延りやすいのだ。    
必然的に少数の権力者による専制政治か、または多
数の既得権者による衆愚政治に陥り、経済合理性は
無視され、国家は財政破綻への道を歩むことになる。
 「社会主義」国家の弊害が極限に達したため、ソ
ビエト連邦は崩壊し、中国では「自由」を尊重する
市場経済の原則を導入して「正義」の内容を書き換
えてしまった。中国では国有銀行の国有企業に対す
る融資の50%以上が不良債権化していたといわれ
ているが、倒産寸前の国有企業を市場の競争原理に
曝すことによって中国経済は蘇った。共産主義のイ
デオロギーに囚われていたら中華人民共和国もソビ
エト連邦同様、崩壊に向かっていただろう。   
 「自由」と「平等」は、いずれか一方だけでは普
遍的な「正義」にはなり得ず、「自由」と「平等」
という2大原則さえも、状況に応じて変化するのだ。
「正義」は、人間の浅墓な頭脳で判定することは難
しくても、歴史が証明するのである。      
 わが国の現状に照らせば、行き過ぎた「悪平等」
を是正し「自由」を取り戻すため、多過ぎる公的規
制を排除し、中央省庁は縮小解体して、国民の安全
と最低生活だけを保障する「小さな政府」を目指す
ことが正しい道だ。              
 公的年金の過去債務450兆円も含めて、100
0兆円(GDPの200%)をはるかに超える日本
政府の巨額債務は、非効率な公的セクター(Tax Ea
ter)を大幅に縮小し、民間セクター(Tax Payer)
による自由な経済活動を拡大させることによって、
GDPを倍増させることができなければ、解消は不
可能だろう。                 
 補助金と巨額の公的資金によるバラマキ行政や、
公的年金制度にみられる議員、公務員への優遇給付、
世代間不公平は正義に反するものであり、一刻も早
く是正すべきである。             
 日本再生のために、「受益」と「負担」、「権利」
と「義務」を一体化させて、モラルハザードを回避
し、日本社会に正義を取り戻さねばならない。  
 日本経済のGDPを倍増させるためには、「量」
から「質」へ、「所有」から「利用」へ、「有形」
から「無形」の財産へと、保護すべき財産権の内容
を書き改め、土地と金融資産の有効活用を図り、日
本経済の付加価値を飛躍的に高める必要がある。価
値観を改めて、「正義」の内容に変更を迫り、抜本
的な税制改革と社会制度の変革を実現しなければ、
日本の再生は難しいのだ。           
 個人の自立を助ける施策は重要であるが、既得権
者を温存し、受益と負担を別会計とする中央集権制
による縦割り行政の諸制度は、原則として廃止すべ
きである。所得の再配分を目的とする課税は少なく
し、「権利」を求めるすべての国民の納税「義務」
による縦割り行政の諸制度は、原則として廃止すべ
きである。所得の再配分を目的とする課税は少なく
し、「権利」を求めるすべての国民の納税「義務」
を徹底しなければならない。資産、資源の有効活用
から生まれる付加価値に対する課税(=消費税と利
用税)で受益者負担を徹底し、公平な課税で国民の
担税能力を高めることが可能になれば、巨額債務の
累積と財政破綻は回避され、日本経済は間違いなく
再生への道を歩むことになるだろう。「正義」の実
現こそ、日本再生への道なのだ!        

生活者主権の会生活者通信2004年05月号/04頁