生活者主権の会生活者通信2004年12月号/05頁..........作成:2004年11月28日/杉原健児

全面拡大表示

<新ライフスタイル特集>
人間 120年

千葉県柏市 峯木 貴(mineki@bekkoame.ne.jp)

 「人間五十年 下天のうちを比ぶれば 夢まぼろ
しのごとくなり ひとたび生をうけ 滅せぬものの
あるべきや」                 
 余りにも有名な『敦盛』の一節である。    
 人間の一生は夢か幻のように、アッという間に過
ぎ去るからこそ、何に向かうかという人生の目的が
最も重要になる、というような意味である。信長が
こよなく愛した一節といわれているが、当時の武将
は、「四十九年 一睡の夢 一期の栄華 一盃の酒」
と上杉謙信も詠っているように、50歳を人間の寿命
と見ていたのだろう。             
 確かに現代でも、わき目も振らず一生懸命に人生
を突っ走ると50年ぐらいで燃え尽きてしまいそうで
あるが、これは仮の寿命である。実際の平均寿命は、
縄文時代にはたったの14歳、江戸時代には20歳、昭
和20年に50歳といわれている。そして、平成15年で
は日本人の平均寿命は女性85.33年、男性78.36年と
なり更に記録を更新中である。         
                       
 下に示す人口ピラミッドの推移を見ると、1950年
はいわゆるピラミッド型をしている。つまり多産多
死の発展途上国型である。そして現在にあたる2000
年は釣鐘のような型で、高齢者といわれる65歳ぐら
いまでの各年齢層の人口比がほぼ一定となる、いわ
ゆる少子高齢の先進国型である。そして、少子化が
さらに進展し、医療制度が充実していくと、2050年
には65歳以上の人口比が非常に高く、また幼少人口
がさらに減るという超高齢化社会に突入する。  
 年数とともに高齢といわれる部分が大きくなり、
このような歪な人口ピラミッドを構成する。2000年
のグラフでは25〜30歳に山があり、そのまま50年ス
ライドさせ2050年にあてはめると丁度80歳がピーク
となるような構成となる。そして、その下の人口は、
一度も山(ベビーブームともいう)を迎えることな
く50年が経過するという筋書きと読める。    
 65歳以下の人口を増やすことは、比較的容易なこ
とと考えられる。これ以上日本人に子供を生めとい
うのは限界があるが、例えば若い労働力が海外から
日本に移住すれば解決する問題である。政治的には
問題はあるかもしれないが、物理的には可能なこと
である。しかし、本当に問題なのは、人口の多くを
占める「高齢者」の部分が将来に渡りさらに大きく
なることである。               
                       
 みなが長生きして幸せなことである、と一言で片
付けてしまってよいのであろうか。全ての人が、健
康で楽しい日々が暮らせればそれに越したことはな
い。しかし80歳を超える高齢で、多くの人が健康で
楽しい日々を暮らすとは到底考えられない。持病、
近所付き合い、金銭的なことなどなやみは尽きない
だろう。                   
 2050年のグラフを見るとおよそ80歳がピークとな
る。つまり、現在30歳前後の人々がこの年齢層をそ
のまま継承するわけである。2000年時点で平均寿命
といわれている年齢が、2050年では人口の大きな比
率を占め、80歳はまだまだ若いという時代となるだ
ろう。                    
 さらに、その上の年齢ではどうなるのか。   
 グラフでは 100歳までしか示されていないが、限
界寿命といわれている 120歳を頂点に人口ピラミッ
ドは伸びていく。これも2050年の人口ピラミッドの
特徴で、 100歳以上もあたりまえに生きるのである。
 1950年からわずか 100年間で人口構造が大きく変
わり、その後さらに高齢化が進むものと考えられて
いる。人口ピラミッドは、より細長く背が高くなっ
ていくに違いない。そして2050年の80歳のピークは、
少しずつ細まりながらそのまま上に伸びていく。つ
まり、日本人はあたりまえのように限界寿命まで生
きる時代が来るのである。           
                       
 ただ生きるだけでは 120年間は余りにも長い。21
世紀のライフスタイルはこの長期にわたる人生をい
かに「よく」生きるかを模索することである。「21
世紀のライフスタイルを考える会」では、人生の終
焉の時期をどう生きるかを含め、食、住、環境など
広範囲に渡り生き方について考えている。 「120歳
までどのように生きるか」ということを改めて自分
に問うことから始めたいと思う。        
p-05(1).jpg

備考:国立社会保障・人口問題研究所のデータより作成
(ここををクリックすると図表が拡大表示されます)


生活者主権の会生活者通信2004年12月号/05頁