生活者主権の会生活者通信2005年01月号/13頁..........作成:2004年12月27日/杉原健児

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文民統制

東京都豊島区 吉井正信

 2004年12月7日の毎日新聞「余録」欄に憲
法改正するときに留意すべき問題点を指摘していま
した。わたしも憲法を改正する必要性を感じていま
すが、今の政治家には官僚や軍人をまとめきれるだ
けの力量が感じられませんので、この問題はやはり
慎重に取り扱うべきかなとも思っています。   
           ☆           
 2004年12月7日 毎日新聞朝刊1面「余録」
 「統帥綱領・統帥参考」という戦前陸軍の二つの
文書を、軍による国家乗っ取りを方向づけたものと
して注目したのが司馬遼太郎だ。それらは一部の参
謀本部将校しか知らない「機密文書」でありながら、
憲法を超えた参謀本部の権力を規定していたのだ。
とくに「統帥参考」は統帥権を超法規的なものとし、
参謀本部のような統帥機関は憲法上の責任が問われ
ないものとした。また軍事上必要ならば直接国民を
統治できるという。司馬は秘密裏に憲法を私議した
幕僚らが、明治人の苦労して作った国家をあっとい
う間につぶしたことに怒りをぶつけた。     
 「政治に拘らず只々一途に己が本分の忠節を守り」
とは戦前の軍人に叩き込まれた軍人勅諭だ。それが
政治を支配したのだから権力がからむと人はあてに
ならない。今の自衛隊法も政治活動を制限している
が、こと文民統制について心配しすぎと思えるほど
神経質な人がいるのも仕方ない。        
 陸上幕僚監部というから陸自の中核をなす幕僚機
関だ。その佐官クラスの幹部が「国民の国防義務」
を掲げた憲法改正案を作成し、自民党憲法調査会の
改憲案起草委員会座長に渡したという。軍隊設置や
集団的自衛権の行使もうたったものだ。     
 自衛隊OBの中谷元座長は「私個人の研究のため」
案作成を頼んだと明かしている。公務員の憲法尊重
擁護義務や文民統制に抵触するかどうかは、政府で
調べるという。ただ現職幕僚が与党の憲法改正に向
けた政治プロセスに加わるというのは何ともいただ
けない。                   
 自衛隊幕僚といえば安保防衛のプロフェショナル
だ。おのずとプロとしての職業倫理がある。司馬遼
太郎が昭和陸軍の幕僚にマユをひそめたのは、彼ら
にプロとしての合理性と倫理が欠けていたからだ。

生活者主権の会生活者通信2005年01月号/13頁