生活者主権の会生活者通信2005年12月号/10頁..........作成:2005年12月01日

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ナイーブな日本人

東京都文京区 岡戸知裕

最近とみに増税論議が盛んになってきているが、どうもまたナイーブな日本国民が騙されているような気
がしてならない。
歴史を振り返ると、満州事変が謀略であったことも知らされず、対英米戦争の原因も不明のまま帝国陸軍
の意図した大東亜戦争なるアリ地獄にまっしぐらに落ちてゆき、鬼畜米英というスローガンが負け戦とな
れば一億玉砕に変化し、戦争終了時には一億総懺悔となり、当の国民は何が何だか分からないうちに原爆
が落ちて終戦を迎えたというのが太平洋戦争の実相だと思う。
現代の国債問題もそれに似た様相を呈しているのではないだろうか?
国債は破綻する!年金は払えない!サラリーマン増税!こういった情報を流布しているのは厚生省や財務
省で、大増税必死キャンペーンの周到なる一環といえる。ポークバレル事業という選挙の票を取るための
税金のばらまきに多くの国税が使われてきたことと、太平洋戦争以来の縦割り予算制度のために歳入が4
0兆円で歳出が80兆という太平洋戦争当時と同じような予算が毎年組まれている。
それでは大増税は不可避かという点に関してこれも過去の歴史をみると、第二次大戦直後のアメリカの財
政事情と現代の日本は非常に類似点が多いことに興味を引かれる。アメリカはドイツと日本を相手に世界
の兵器庫としての役割を果たしてきたわけだが、空母の大増産や戦略爆撃機B−29を数千機単位で発注し
戦争には勝ったものの、財政はやはり破綻状態に陥っている。1945年の終戦時において、アメリカの
国債発行残高はピークを迎え3000億ドルとなった。国債残高と国民所得の比率も現代の日本と酷似し
ており、国債の引き受け手も銀行で、米国国内ですべて国債が消化されている。この米国債がどのように
償還されていったかと言えばアメリカの市場が世界に開放され、輸出も米国の一人勝ちの状態で好景気が
訪れたことによる。現代の日本も中国市場という神風の出現で景気は好転してきているわけで、日本の市
場をさらに海外に開放し、規制撤廃による内需の拡大と対米、対中輸出の拡大で償還は可能だと思う。

要するに言いたいことは、国債問題についてはアメリカという前例があることを忘れるなということで、
ちゃんとした国債管理政策と政府の大胆なリストラがあれば充分返却可能な数字であるということを忘れ
てはならない。自動車重量税などの自動車諸税などは道路建設よりも国債の返却に廻せば良いだけの話で、
今の縦割りの考え方を捨て去るべきだと思う。(歴史の視点から言えば、太平洋戦争で中国大陸での陸軍
の予算をすべて海軍の廻し対米戦争を遂行していれば、太平洋戦争に勝てたかも知れないという仮設も成
り立ち、陸海軍の縦割り予算の弊害の結果戦争に敗れたともいえる)
政府の一億玉砕論には加担してはならないということを最後に付け加えたい。

生活者主権の会生活者通信2005年12月号/10頁