驚きの数値を新聞で見た。
「就学援助4年で4割増」。06年1月3日の朝日新聞トップ記事である。
ある程度の予感はあったが、これほど進行しているとは思わなかった。
公立の小中学校で文房具や給食費、修学旅行費などの援助を受ける児童・生徒の数が、04年度ま
での4年間に4割近くも増え、受給者率が4割を超える自治体もあることが、朝日新聞の調べで分か
ったというのだ。
ここ暫く続いたリストラの影響が大きいと思われるが、OECDが最近発表した所得格差係数(ジ
ニ係数)(注1)では、日本はOECD25ヶ国中第10位、貧困率(注2)の高さはメキシコ、アメリ
カ、トルコ、アイルランドに次いで第5位で、その数値は着実に上昇している。
その原因は人口の高齢化や単独世帯の増加があるとされてきたが、更に日本は他のOECD諸国に
比べて社会保障給付及び税による所得格差の縮小策が極めて貧弱であることと、日本における広汎な
低賃金(パート賃金)の存在が大きいと言われている。
日本は豊かな国だという認識が一般的だと思うが、就学援助率とOECDの貧困率という二つの係
数から見ると、日本における所得格差は確実に広がっており、親の力だけでは満足に学校生活が送れ
ない子供達が、驚異的に増えていることになる。
国民オール中産階級と言われ、活気に満ち溢れていた時代には考えられなかったことである。
現在の政権政策がそちらの方向を向いており、多くの国民がその政権を支持しているので、こうい
う結果が出るのは当然のことかも知れないが、アメリカ型社会の悪い面まで真似ることはあるまい。
勿論、教育基本法はそういう状況を想定して、国や地方自治体に就学援助を義務付けている。
しかし、それは金銭的側面のみで実施されており、子供達の精神的側面は全く配慮されていない。
荒廃した教育現場の建て直しを図るための教育論や社会論以前の問題である。
子供達には広い範囲のEqual Footingを与えてやらなければならない。
かけっこで、スタートラインで差をつけられては、やる気も起こらないだろう。
新郵政会社と宅配会社とのEqual Footingや、国会議員の世襲に規制をかけるEqual Footingなどの議
論はあるが、それよりはるかに重要な、将来の日本を背負って立つ子供達のEqual Footing の議論を
もっと高めなければならない。
子供達は勿論DNA(親)は選べないので、本人の努力次第で相応の結果が出せるように、機会は
できるだけ均等に与えてやらなければならない。
ホリエモンが相続税率は100%がいいと言っている本当の理由は分からないが、子供達の機会均
等という面では理論的にはある程度うなずけるものがある。
国の将来は子供の教育にかかっている。一にも二にも教育である。その教育の根幹にかかわってい
る親の影響力が、所得格差という経済的な側面で大きく2極化しつつある現状は将来の国の破壊にも
つながりかねない。
スカンジナビア諸国ほどは望まないが、所得の再配分の是正により、所得の格差を縮小するか、子
供は国民全員で育てるものだというような制度を導入するかして、子供達に満足してもらえるような
Equal Footingを与えてやりたいものである。
(注1)やや複雑な統計数値(インターネットで検索可)。
(注2)世帯可処分所得を世帯人数の平方根で除して各世帯員に割り付けた数値の、全国民の中央値
の半分以下の可処分所得しかない者の比率。
|