自民党は昨年の総選挙で郵政民営化による「小さな政府」の実現を国民に訴え、「改革を
止めるな」のキャッチ・コピーで、理念が曖昧な民主党を圧倒し惨敗させた。
その余韻はいまだ冷めず小泉内閣の支持率は高いが、耐震データ偽造問題やライブドア・
ショックで俄かに風向きが変り、民主党にとって無かった筈のチャンスが巡ってきそうだ。
政権交代を実現するために、民主党は小泉自民党の勝因を徹底的に分析すべきだ。党首の発
言は国民の過半数の意思を代弁するものでなければならない。国民が支持しない少数意見に
こだわっていては、政権を取ることはできないからだ。
昨年12月の民主党大会で前原代表は、耐震データ偽造問題を踏まえ、「官の責任放棄、
民の倫理低下」を指摘し、「官には効率化、民には公共性を求めることによって、官でも民
でもない公を追及する」と述べた。
「官でも民でもない公とは何か?」、その具体策が見えないことが残念だ。人間社会にと
って政府は不可欠の存在である。しかし、「政府の無責任と非効率」は古今東西に例外はな
い。政府は無責任で非効率だからこそ、小さい方が望ましいのである。パーキンソンの法則
が教えるように政府は仕事がなくても肥大化する傾向があり、「小さな政府」は、すべての
政府にとって実現が難しい永遠の課題なのだ。
求むべきは、大増税の不安を与えない「小さくて賢明な政府」であり、不正を許さない合
理的システム(制度)である。「官から民へ」の具体策は「官」の「株式会社化」だけでは
ない。「公」を「官」に任せず「民」で担う非営利のシステムが重要だ。
学ぶべきは、「官」に頼らず「民間人」として「公益」を追求した「渋沢栄一」の理念と
晩年の行動である。民主党は世界に通用する理念「自立と共生」を再確認し、問題解決の具
体策をマニフェストで示して欲しい。
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