生活者主権の会生活者通信2006年03月号/08頁

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板橋氏の「民主党のマニュフェストを作り直せ」へのコメント

東京都文京区 松井 孝司

 民主党のマニュフェストに関して板橋氏が提起された6項目については、すべて同感です。
以下に若干のコメントを追加させていただきます。

(C)教育・文化:民主党の「公立小中学校の改革を断行する」方針は大賛成です。しかし、
公教育に多額の税金を投入しても子供の向学心が低下していては、成果は上がらない。板橋氏
が指摘されるように子供の学力が頂点に達したのは団塊の世代がすし詰め教室で学んだ時であ
る。少子化で子供の数は激減したが、公教育に携わる公務員の数は100万人を超え、殆ど減
っていない。公務員の束縛を受ける公立小中学校では自己改革が難しく、非効率な公教育は財
政破綻の要因になろうとしている。教育分野でも「官から民へ」の視点に立った改革が重要と
思う。価値観の多様化に対応できる多様な教育が必要であり、多様な教育プログラムと優れた
人材を持つ民間NPOにも教育の場を提供し、教育の内容で公教育と競争させ、質の向上を図
るべきだ。学校教育だけが教育ではない。
(D)農業・林業・水産業:農林水産業は財政破綻目前の日本の縮図であり、「大きな政府」
の犠牲者である。農村・漁村は補助金付け、ばらまき行政により自立できない弱者集団になっ
てしまった。土地改良事業などに対する累積投資額は約75兆円にもなるが、殆ど役立ってい
ない。受益者負担の経済原則を無視した助成策は必ず失敗する。
 農協と漁協、外郭公益法人は大きな政府の出先機関となり、既得権の巣窟となっている。規
制を撤廃して農地と海の利用権を広く国民に開放し、新規事業の育成で農林業と漁業の付加価
値を高める政策が必要と思う。農地の有効利用を促進し、遊休農地には厳しく課税して荒廃を
防ぐべきだ。
(E)暮らしの安全・安心:犯罪者の多くが海外からの密入国者、不法滞在者であり、海外か
らの入国者を潜在化させていては、警官の人数をいくら増やしても安全が確保される保証はな
い。日本社会のボーダレス化、国際化に備えた法整備の遅れが問題と思う。
(F)経済・規制改革・中小企業:「高速道路無料化」に対しては、生活者通信(2002年10月
号、同年12月号、2004年1月号、当会のホームページhttp://www.seikatsusha.org/にも掲載)
への投稿も参照していただきたいが、私はどのような経緯で「高速道路無料化」が民主党マニ
フェストに入ったのかを問いたい。
 田村重信著「民主党研究」によれば、前原誠司高速道路整備検討チーム座長らも本音では反
対だったが、菅代表が「それじゃ、自民党と同じだ」と言って押し切ったとされている。高速
道路の無料化は、巨額の税金投入を意味する。国家の財政破綻と大増税を心配する国民の声を
無視していることが問題だ。自民党は採算の取れない高速道路を税金でつくり無料化する方針
だ。民主党のマニフェストは、自民党道路族の主張と変わらないのではないか?

 国民は、民主党を「大きな政府」、労組既得権の代弁者と思っている。それを真っ向から否
定しなければ、民主党に勝ち目は無く「小さな政府」というキーワードが民主党マニフェスト
には不可欠と思われるのに、大きな政府志向であった自民党に、このキーワードを奪われてし
まった。これこそ民主党惨敗の原因ではなかろうか?民主党政権になったら増税は避けられず、
増税分はかなりの部分が公務員の給料に化けると国民は予感している。この国民の危惧を払拭
できるマニフェストが必要だ。
 民主党のマニフェストに小さく目立たないように印刷されている「道州制の実現へ向けた制
度整備」は、新しいキーワードになる。生活者主権にもとづく画期的な「道州制」の具体策を
創ることができれば、民主党のイメージ刷新に格好の政策になると思う。
 大きな政府志向の学者(その多くがTax Eater!)に好評のマニフェストでは,総選挙に勝利
することはできない。次の総選挙で政権交代を実現するために、民主党のマニフェストは、合
理的で実現の可能性が高く、国民の過半数が賛同し、国民が熱望する項目だけに内容を絞り、
重点項目はわかりやすく1枚の紙にまとめられるように抜本的な改定が必要と思う。

生活者主権の会生活者通信2006年03月号/08頁